今の時代に大切なのは
自力で泳ぎ回れる力を得ること

「籍」を得て堤防の内側に入り、残りの人生を安心して過ごせる社会はもう終わっている。だが、そのことをはっきりと宣言し、生き残るためのロールモデルや戦略を一般の人々に示せるリーダーは、政治家にもビジネス界にも、まだ出てきていない。なぜなら、それに対応できる社会制度のあり方を示すアイディアがまだないからだ。

 現段階では、政治家やビジネス界が示すものは、非常に中途半端に「新たな堤防を作る」ようなものしかない。

 やるべきことは、新たな堤防をつくることではなく、自力で浅瀬まで泳ぐためのアシストを行なうことではないだろうか。具体的には、大学における厳格な単位取得制度の導入や、入社基準の緩和、正社員評価の透明性確保、それら評価による正社員解雇基準の緩和などだろう。「頑張った人、頑張り続けている人をより好待遇にする」ためのものである。

 ただ、社会変化の歩みは遅いだろう。その間にも、それぞれの個人は大きな不安に悩まされ続けている。したがって当面は個人的に、この不安への対策を講じなくてはならない。

 精神科医の友人によると、そういった不安のほとんどは、体調不良という形で表れてくるという。慢性的な頭痛、だるさ、疲れ、風邪のような症状や、なにかしらのアレルギー症状も含む。

 つまり、まずは体調をチェックし、それがどんなストレスからきているのかを「自覚」することが重要となる。例えば、よく眠れないという症状を持っているならば、それが具体的にどんな症状かをより細かく知るようにする。毎日の就寝、起床時間をチェックし、睡眠時間のグラフを作り、よく眠れるときと眠れないときは「何が違うのか」を調べるのだ。そうすることで、自分の不安やストレスの正体を自覚することができる。

 不安障害やストレス障害に悩む人は、自分が何に不安やストレスを感じているのかがわからない場合が多い。ここで書いている「将来への不安」でも、まだ漠然としているのだ。上記のような方法で、より詳しい「自分個人のストレス原因」を明らかにするだけで、不安やストレスそのものがかなり軽減する。漠然とした「形のない不安」こそが、もっとも人間の体や心を苛むのだ。

 そうして、不安やストレスの正体がわかれば、「対策」を考えることができる。もちろん根本的な対策をとるには、個人では難しい場合も多いし、時間やお金もかかるだろう。だが、できることから始めていけば良い。

 その個人的な対策は、不安やストレスを一時的にでも和らげられるものならば、なんでも構わない。スポーツや趣味に打ち込んだり、パワースポット巡りをしたり、など、いろいろあるだろう。

 だが筆者がおすすめするのは、今の不安を避けつつ、少しずつ将来の不安を軽減できるような方法だ。例えば、楽しめる範囲で英会話に取り組んだり、新たな資格の勉強をしたりと、「会社や社会に頼らなくても生きていける実力」をつけるために、小さくてもいいからいろいろなトライをしてみるのだ。それを楽しみながら、やっていくことが大切だと思う。

 それはつまり、堤防の外の荒海でも泳げるようになるための、実力をつけていく過程である。すでに堤防型社会は崩壊し、不安の根本要因はなくならない。その不安を払拭するためには、最終的には自分で泳げる実力が必要なのだ。

 年齢や家族の問題など、いろいろな理由で、今を耐えるのが精いっぱいの人も多いと思うが、そういったトライそのものが、精神的健康を支えてくれるのもまた大切なことだと筆者は考えている。わずかなことでもいいので、自分のスキルや実力を楽しみながらアップさせる「趣味」を持つことを提案したい。