焦点は移民、拠出金負担、国家主権

 日本在住で現在、英国リーズ大学大学院で学ぶポール・クレイグ氏によれば、EU離脱派と残留派の対立点は、三つにまとめられる。

図版作成:日本総研

 もっとも大きな争点が移民問題。「英国の低所得層の人々は、英国人より低賃金でも喜んで働く東欧諸国からの移民が、自分たちの職を奪っていると感じている。低所得層の居住地域には、さまざまな国からの移民が数多く住んでいる」(クレイグ氏)。実際、04年に東欧諸国がEUに加盟してから、EU域内からの移民が増加(図表2)し、政府は移民をコントロールできていないという批判にさらされている。これに対して、残留派は少子高齢化進む中で、特に若くて、スキルのある移民は英国経済にとって、必要不可欠だと考えている。

 二つ目がEUに支払う拠出金の問題。EU加盟国は原則GDPの1%をEUに拠出金として支払う。実は英国は特別扱いで還付金を差し引いた純負担率はドイツ、フランスより低いにもかかわらず、離脱派は英国は常に支払い超過であるため、EUから離脱すれば、英国のために拠出金が使えると主張している。これに対して残留派は、EUから多額の農業補助金など還付金があるのに加え、貿易・金融面などで拠出金以上の恩恵を受けていると主張している。

 三つ目が国家の主権にかかわる問題だ。EUの歴史は統合を深化させる歴史だったが、もともと大陸のEU諸国より独立心の強い英国は、EUで決定した法やルールによって統治されることを嫌う傾向がある。離脱派は自分たちの法律は自分たちで決めるべきだと主張するのに対して、残留派はEUにも英国のリーダーが参加して、法の策定に関わっているではないかと反論する。

 総じて見れば、低所得層、低学歴層に離脱支持者が多く、富裕層あるいはリベラルな考えを持つ人たちに、残留支持者が多いとみられる。2大政党である保守党、労働党の中でも、離脱派と残留派に意見が分かれており、特にキャメロン首相が率いる保守党は離脱派も多く、国民投票でどちらが勝つか、だれにも分からない。確かなことは「英国が二分されてしまった」(クレイグ氏)ことだけだ。

世界経済後退の引き金に

 では、国民投票で離脱派が勝ったら、何が起こるのか。

「当初はポンド安、金利上昇、英国の株安が起こるだろう。しかし、その後の離脱の過程で、どう物事が進むのか。パターンが多くて手掛かりが得にくい」。こう語るのは大和総研経済調査部の山崎加津子主席研究員。つまり、不確実性が急速に高まるわけだ。