しつけには、アメとムチが必要
しつけには、アメとムチが必要です。
アメは、お母さんの愛情ある行動――声がけ、手助け、温かい表情です。
ムチは、お母さんの忍耐力――時を変えながら何度も繰り返して教える、その根気を維持する体力にムチ打つことなのです。
私が子育てで一番苦労したのは、自分の悪いクセ、短気なところ、移り気なところで、怒りたい、たたきたい、大声を出したいという気持ちを抑えることでした。
子どもが悪さをしたり、聞き分けがなかったり、なかなか理解できない鈍さがあったりして日々イライラしましたから。
そんなとき、心を鎮めるために、何度も数を数えて我慢しました。
「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10」を繰り返したのです。
息子も3歳くらいになると、私のヒステリックに怒りだす限界を知り、いつも息子に一本取られるようになりました。
今思うと、子どもたちから多くのことを学びました。
まったく愛情を受けずに育ったり、愛情が乏しい環境で育つと、親からのしつけがマイナス方向へ行き、子どもの性格までも歪めてしまいます。
また、そればかりではなく、脳の仕組みにも歪みが生じてきます。
「母性愛」と「父性愛」をうまく使い分けて、子育ての楽しみを味わってください。
(Kisou Kubota)京都大学名誉教授、医学博士。世界で最も権威がある脳の学会「米国神経科学会」で行った研究発表は、日本人最多の100点以上にのぼり、現代日本において「脳、特に前頭前野の構造・機能」研究の権威。2011年、瑞宝中綬章受章。1932年、大阪生まれ。著書に、『1歳からみるみる頭がよくなる51の方法』『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』『あなたの脳が9割変わる! 超「朝活」法』(以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
<競博士のひと言>
人は「愛する」と、脳にどんな変化が起こるのでしょうか。
熱烈恋愛中の大学生の男女に、それぞれ別々に恋人の写真を見せました。
すると、「中脳被蓋核」(脳の下側)と「側坐核」が働きました。
側坐核が働くと、快感が発生し、気持ちよくなって、やる気が出てきます。
「中脳皮質辺縁系」とは聞き慣れない脳の用語ですが、海馬と前頭前野を働かせるためにある構造で、別名「動機づけの回路」と言われています。
でも、友人の男女の写真を見せても、この現象は起こりません。
中脳皮質辺縁系は、愛する人のために、何か準備活動をする領域だからです。
これらの領域が働き、愛する人のために何をするかを前頭前野で考え、実際に前頭前野と基底核が働いて行動を起こします。
結果、愛する人が反応して、何かをしてあげることになり、さらに深く愛し合うようになります。
そうすることで、互いに感性を高め合うことができます。
母性愛、父性愛でも、同様のメカニズムが働いているようです。