欧米豪にみられる補助器具の発達

 欧米豪では「働き手の健康と高齢者の安全を守るのは当然」という考え方が徹底している。力を入れるような肉体作業はできるだけ機器を使い、その分、会話などで精神的なつながりを大事にしようということだ。

 こうした発想が浸透し、加えて日本より肥満体の高齢者が多く、人手での移動が難しいこともあって、多くの補助器具が開発されている。ベッドから車いすなどの移乗時には介護リフトを必ず使う。

体の前にバーがあり、安心度が高いドイツ製の移乗リフト

 小さなハンモックのようにシーツ(スリングと呼ぶ)を袋状にして高齢者を包み込み、持ち上げて移動する。職員の手作業は下半身にシーツを敷き込むだけ。上下移動などはボタン操作でいい。力仕事から完全に解放される。

 移乗リフトには、キャスターを付けて床を走行させるタイプと、天井に組み込んだレールからリフトを吊り下げる天井走行型がある。スペースを採らない天井走行型が海外では普及している。このリフトの有無が日本と海外の施設の大きな違いだ。

 浴槽も海外ではほとんど見ない。といっても、普通の人の日常生活でも浴槽はあまり使わないから施設にもないだけのこと。日本の「風呂文化」がもともとない。だが、リフトの有無は生活習慣の違いでは済まされない重大事である。

 安倍政権は政策目標として「新3本の矢」を掲げた。「GDP600兆円」「保育園の待機児童ゼロ」と並んで「介護離職ゼロ」である。家族介護のための離職を防ぐには、介護現場の質と量の充実が欠かせないところから、まず介護職の離職防止が優先施策となるはず。腰痛は大きな離職理由で、リフトは最も有効な対策である。

 一方でロボットの推進も政権は熱心で、成長戦略の柱に据えた。そこで介護職の負担軽減を狙い2015年度の補正予算に52億円も計上し、介護ロボットの利用支援事業を始めた。1つの施設で300万円までの介護ロボットが全額国庫補助という大盤振る舞いである。

 その予算枠内に介護リフトが含まれるか施設関係者から注目された。事業者からの申請を横浜、神戸の両市ではそのまま厚労省に上げた。全国の施設から介護ロボットの申し込みが殺到、このほど厚労省が示した内示でほとんどの介護リフトが外れた。「センサーが付いてないのはロボットではない」という理由だ。

 だが、「腰痛対策の絶好機だったのに」「人の動きを手助けするのがロボットではないだろうか、工学的な定義に拘るのは疑問」と現場からの不満の声は多い。

 では、「職業病」に労働基準法はどう対処しているのか。