消防法に基づく行政や消防署からの指導もあり、日本ではほとんどの企業や病院・施設などで防災訓練が行われている

9月1日は防災の日です。多くの企業や病院・施設などでは、防災訓練といえば「地震発生→火災発生→避難」を想定した訓練で、訓練内容も例年同様。参加者も限定されるなど、マンネリ化していませんか。今回は、齋藤塾流「実践的な震災対策訓練」のポイントを、すべて公開します。(齋藤 實・元東京都総合防災部情報統括担当課長)

形骸化している防災訓練

 日本では、地震や台風といった自然災害に見舞われることが多いことや、消防法に基づく行政や消防署からの指導もあり、ほとんどの企業や病院・施設などで防災訓練が行われています。

 これまでの訓練の多くは、「○時○分、□□で火災発生、消火班による消火不能、直ちに△△へ避難」となっており、自衛消防隊隊長の指揮のもと、消火班、避難誘導班、救護班など、それぞれの役割に応じた訓練を行ってきました。予定された時間に必ず責任者がいて、必要な指揮を執り、必要な資機材もあらかじめ用意され、各参加者は何分後に何を実施するか決められており、何分後に火災発生、初期消火、避難誘導など、あらかじめ定められたシナリオに沿った行動が行われています。

 このような訓練では、次のような問題点が指摘されます。

 ○参加者が固定化し、参加意識も低く、形骸化している
 ○訓練のねらいが不明瞭である
 ○訓練回数が少ない
 ○勤務時間中の訓練で、夜間帯での訓練をしていない
 ○訓練シナリオに沿って行動しているだけである
 ○電気、通信等が停止した想定の訓練はしていない
 ○訓練の実態とマニュアル等とが合っていない
 ○訓練で得られた教訓等の記録や、改善がされていない

 こうした「シナリオを読み上げる訓練」または「シナリオに沿った行動訓練」を繰り返し行っても、実際の災害にはあまり役に立ちません。災害は訓練で想定していた通りに発生するのではなく、想定しない事態が発生することが多いからです。