なぜ日産自動車のクルマは売れなくなったのか。その見直しのプロセスで絶対にやってはいけないことがある。海外営業の関係者証言から、日産の昔から変わらない“病巣”を解き明かす。(ジャーナリスト 井元康一郎)
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クルマ造りを見直すプロセスで
絶対やってはいけないこと
次は商品であるクルマ造り。技術力があることと、売れるクルマが造れることは決してイコールではない。
日産は販売不振の言い訳で、「新商品をタイミング良く供給できなかった」と言っている。しかし、20年以降の北米市場向け新商品を確認すると、(米国基準での)コンパクトSUV「ローグ(エクストレイル)」、ミッドサイズSUV「パスファインダー」、ピックアップトラック「フロンティア」、クロスオーバーBEV「アリア」、スポーティクーペ「フェアレディZ」など、重要モデルを大量投入しているのは一目瞭然だ。
今の販売不振の原因は、新商品不足ではない。新商品が顧客に受け入れられなかったということだ。その現実をしっかり直視して、自分たちが何をすべきか根本から考え直す必要があるだろう。
なぜ日産車は人気を獲得できなかったのか。ふわっとした印象論で語るのは簡単だが、真の原因は実に多くの要素が複雑に絡み合っていて、ここを直せばOKといった単純な結論を得られるものではない。投入車種、デザイン、技術パッケージ、価格などを総合的に判断するしかない。
その見直しのプロセスで絶対にやってはいけないことがある。原因がどこにあると決めつけて責任追及をすることだ。日産は昔から何か問題が起こる度に、「社長が悪い」「設計の責任」「生産がコケたせいだ」などと派閥に分かれて対立する悪習がある。近年はこれに、「ルノーとの不平等条約のせいにする」も加わっていた。
クルマを世に出した時点で、売れない責任は会社全体が連帯して負うべきではないだろうか。それを忘れて糾弾会が始まってしまうと、社内力学によって「本来は良かった部分」まで否定されるケースも往々にして起こる。今の日産は、一つのミスも許されないくらいの緊迫した状況なのだから、感情論や保身によって誤判断を下すような事態だけは絶対に避けなければならない。