EV開発での協業の検討を発表する日産自動車の内田誠社長(左)とホンダの三部敏宏社長EV開発での協業の検討を発表する日産自動車の内田誠社長(左)とホンダの三部敏宏社長。この記者会見で両者が握手することはなかった(3月15日) Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

ホンダ、日産自動車、三菱自動車が、電気自動車(EV)における協業で、二つの合弁会社の設立を検討していることが分かった。だが、実現までに乗り越えるべきハードルは高い。従来、どちらのEVバッテリーの技術を採用し、共有化するかでホンダ、日産が衝突していたが、そこに、日産の経営の不安定化という新たな難題が加わり、交渉が複雑化した。3社の提携に向けた協議の内実に迫った。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

日産の経営悪化で
EV協業の主導権はホンダに

「日産自動車では、内田誠社長に、耳の痛い情報がきちんと入っているのか」

 最近の日産の大幅減益や、遅きに失した人員削減の発表などを見て、ホンダのある幹部はこう疑問を口にした。

 日産は11月7日、2024年4~9月期の営業利益が前年同期比90%減となったことや、24年3月期の通期営業利益見通しを7割下方修正することを発表すると同時に、全世界で9000人の人員削減と、生産能力を20%減らすリストラ計画を打ち出した。

 ところが、同計画には、リストラを実施する時期や国といった具体性が伴わなかった。日産が中国や北米市場で苦戦し、余剰生産力の削減が必要であることは少なくとも春以降、明らかだったにもかかわらず、である。

 ホンダ幹部からすれば、日産の経営陣はもっと早く具体的な構造改革を打ち出してしかるべきだった。ホンダ幹部が日産の心配をするのは「余計なお世話」かもしれないが、今年に限れば、そうともいえない。

 なぜなら、両社に三菱自動車を加えた3社は、電気自動車(EV)の開発で協業しようとしているからだ。

 ダイヤモンド編集部の調べで、3社がEV関連で二つの合弁会社の立ち上げを検討していることが分かった。

 次ページでは、二つの合弁会社がそれぞれ行う事業の内容や、合弁設立の狙い、日産の経営の不安定化が3社の協業に暗い影を落としている実態などを明らかにする。