12月8日、単純労働分野での外国人労働者の受け入れを認める「改正出入国管理法」が参院本会議で可決、成立した。2019年4月から導入されるが、日本の公的医療保険が外国人によって悪用されるのではないかと、一部で懸念の声が出てきているという。社会保障や医療政策が専門である、東海大学健康学部健康マネジメント学科教授の堀真奈美氏に詳しい話を聞いた。(清談社 福田晃広)
外国人増加で懸念される
公的医療保険の“タダ乗り”
日本の公的医療保険には、会社員以外の自営業者などが一般に加入する「国民健康保険」と、民間の会社員(被用者)とその扶養家族を主に対象とした健康保険などの「被用者保険」の2つに大きく分かれる。
この中には、外国人でも入国する経緯(ビザの種類)によって、日本の公的保険が受けられるケースもある。
たとえば、短期滞在の観光ビザを取得して日本にやってくる外国人観光客や、病気の治療目的で医療ビザを取得して来日する外国人は、公的保険に加入することは認められていないが、仕事や留学などで長期滞在(3ヵ月以上)する外国人とその家族に対しては、日本人と同等の扱いになる。
ネットや報道などでは、この制度を悪用する外国人が増えているとの指摘も出ているのだが、そもそも、外国人が公的医療保険を悪用することは実際可能なのか。堀氏はこう語る。
「大前提として、悪用かどうか判断することが困難であり、全てを悪用と決めつけるのは問題。明らかに不正、悪用と断定されるのはごくまれなケースです。ただ、総数で公的医療保険に適用される外国人が増えているのは事実。そして、その中に、公的医療保険制度本来の目的・趣旨とは外れたケースがゼロと言い切ることもできないのが現状です」(堀氏、以下同)
堀氏によれば、悪用があり得るとすれば、他人の保険証を借りて、本人になりすまして受診する、あるいは本来医療目的であれば、「医療滞在ビザ」を取得して治療を受けなければならないのに、留学だと偽って国民健康保険に加入したり、本当は扶養関係にないのに扶養家族として、保険を不正に利用したりするケースが考えられるという。
日本で保険証を取得すると、被保険者であれば、前年の年収に応じた保険料を支払う義務も生じるのだが、1年未満の滞在では、保険料を払うことなく、治療を受けて、すぐ自国に戻ってしまうという“タダ乗り”と批判されかねないケースもあり得るようだ。