外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法(入管法)改正案の国会審議が進むなか、注目を浴びるようになったのが外国人への公的医療保険(健康保険)の適用問題だ。
労働者を対象とする健康保険は、本人だけではなく扶養家族の加入も認めている。外国人労働者が増加すると、その家族も健康保険の適用対象となり、医療費が膨張する可能性があるが、それを快く思わない人もいる。
そうした層に配慮してか、健康保険を利用できる扶養家族は、日本国内に居住している人に限定する方向で政府が検討していることを、11月6日の新聞各紙が報道している。翌7日の参議院予算委員会でも、国民民主党の足立信也議員が、外国人労働者に扶養される家族の健康保険の適用範囲について質問する場面があった。
外国人労働者の受け入れ問題のなかで、健康保険の問題がとりあげられるのは、テレビの情報番組や週刊誌などが、外国人による健康保険の不適切利用を疑う事例をあいついで報道していることとも無関係ではないだろう。
外国人の健保利用は合法
不適切利用とは言い切れない
外国人による健康保険の不適切利用を疑うもののひとつとして、在留資格を偽って国民健康保険(国保)に加入し、日本の医療機関を受診するというものがある。
例えば、留学目的で来日して国保に加入した外国人が、来日後すぐに医療機関を受診して、高額な医療費のかかるC型肝炎やがんなどの治療を受けるケースが報道されている。確かに、C型肝炎やがんなど大きな病気を抱えている人がわざわざ留学するとは考えにくく、来日してすぐに深刻な病気が見つかるのは不自然だ。そのため、最初から日本の健康保険を使って治療を受けることを目的に、在留資格を偽って来日しているのではないかと疑われているのだ。
外国人による健康保険の不適切利用で、もうひとつ疑われているのが「海外療養費」だ。海外で病気やケガをして医療機関を受診した場合、その医療費は全額自己負担になるが、帰国後に海外療養費の申請をすると、現地でかかった医療費の一部を健康保険が払い戻してくれる。