インド証券管理局が投資規制に関するコメントを発表した10月17日に、ムンバイ市場は急落。日本を含むアジア市場も大幅安となった。

 だが、そのあと場が開いた欧米市場は無反応だった。日本の下落はグローバル化した投資資金の動きの一環と説明されたが、欧米の動きは異なっていたのだ。

 時差の問題は大きい。場中にアジア市場が開いている東京では、情報の精度より素早く反応するテクニックが必要になる。インドで暴落が起きれば、トレーディングルームに「ムンバイ急落!」と怒号が響き渡る。暴落の意味を解釈する暇はなく、日ばかり中心のディーラーは売りたたいた。

 次の段階ではセールストレーダーが顧客に電話やEメールでムンバイ急落を告げた。だが、この時点になると、機関投資家は必ずしも即座に動かなければならない材料ではないことがわかっている。結局、売りポジションを持ち越せない日ばかりディーラーは買い戻すしかなく、引けにかけて相場は買い戻される展開となった。

 短期的には、先物ディーラーが日本市場の動きを左右している。だが、これらは中長期ではノイズにすぎない。二つの相関マトリックスを見るとわかる。相関係数の読み方は、数値が一に近いほど同じ値動きをする。マイナス一に近ければ逆に動き、ゼロ近辺ならば無関係に動いているという意味だ。

 2007年8月17日の安値を起点とした各指数の短期間の相関係数は、エマージング市場や投機的な商品市場などの動きとは無関係に見える。日経平均株価とアジア株ですら、香港ハンセン指数を除けばすべて0.5以下と相関が低い。為替も日経平均とはほとんど無相関であるのに対し、欧米市場とは順相関になっている。

 だが、1年間の相関関係を見ると、外資規制の厳しい中国を除きグローバルにすべての指数と相関が高いことがわかるのだ。投資信託などで中長期投資を行なう際には、短期のノイズに耳を塞いだほうがよいのである。

 ほかにも表から読み取れることがある。たとえば、日本株を保有しているのであれば、中国株は意外と相関が低いので組み合わせれば総リスクを下げられる。原油に関しても、各指数とも相関が低く、日本株と一緒に保有するには優れている。あとは収益性の問題で、同じリスクを取るなら超過収益率の高い市場に投資するのは自明の理。投資信託やETFを組み合わせれば、自分なりのファンド・オブ・ファンズを作れそうである。
(エクイティトレーダー 山独活継二)

※週刊ダイヤモンド2007年11月3日号掲載分