橋下徹大阪市長が、政府の関西電力大飯原子力発電所3・4号機の再稼働要請決定に反対し、次の総選挙で民主党政権を倒閣すると宣言した。一方、輿石東民主党幹事長は、橋下市長の挑戦を受けて立ち、原発再稼働の必要性を真正面から訴える姿勢を示している。原発を政局にすべきではないという考え方はある。だがこの際、徹底的に論争してはどうだろうか。

 近年の日本政治は、世論の反発を恐れるばかりで徹底的な議論を避けてきた。例えば、野田佳彦首相は消費増税実現のために、「まず身を削る改革を断行する」という。だが、政治家・公務員の給与や人数を削減しても、財政再建に全く効果はない。「まず身を切る」は一見正論だが、実は国民の機嫌を取っているだけで、本質的な議論から逃げている。これまで「事業仕分け」などを通じてできる限りの無駄を削減して、それでも尚、増税が必要だというなら、堂々と国民に訴えるべきなのだ(第28回を参照のこと)。

 だから、野田首相と橋下市長には、原発再稼働是非論を一歩も引かずに徹底的に論じてもらいたい。特に、橋下市長には、単なる原発再稼働反対を超えた議論を展開してほしい。電力供給力の低下を産業構造や社会構造の転換につなげ、「新しい日本」の構想に発展させて、国民に訴えることができるのは、傑出した発信力を持つ橋下市長しかいないからだ(第6回を参照のこと)。

若者を犠牲に、
現職・高齢者の生活を守る野田内閣

 本題に入る。野田内閣は、国家公務員の13年度新規採用を09年度比で56%削減することを閣議決定した。野田首相は「(消費増税で)国民に負担をお願いするからには、自ら痛みをうける大胆な決断をした」と訴える。だが、どこが「自ら痛みを受ける決断」なのだろうか。

 公務員人件費削減は、2年限定のままで恒久化できず、官僚の天下り禁止は骨抜きにされたままだ。公務員年金の加算部門のカットは先送りされた。公務員が定年退職時に希望すれば、原則として再雇用することを義務付ける方針まで決定した。野田内閣の「大胆な決断」で、現職の公務員はなんの「痛み」も受けていない。むしろ新規採用減を押し付けられた若者だけが「痛み」を感じている。