パナソニック 老衰危機_#04_家電地獄Photo by Hirobumi Senbongi

1918年の創業以来、パナソニック(旧松下電器産業)をけん引してきたのは間違いなく祖業の家電事業だ。だが、レガシーと大所帯が足かせとなり、改革は後手に回った。「営業の松下」の代名詞である日本最大の地域店網も、その地位を脅かされている。特集「パナソニック老衰危機」(全10回)の#04では、パナソニックの崩壊寸前の“家電王国”についてレポートする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝、新井美江子)

家電の停滞=テレビの停滞
津賀社長「そこだけは許さない」

 2019年の年の瀬が迫ったある日。家電事業の低収益性について質問を投げ掛けたダイヤモンド編集部記者に対し、それまで穏やかに話していたパナソニックの津賀一宏社長は一転、怒りをあらわにしてこう語った。「家電が厳しいというのはテレビが厳しいということ。分かっているのにまだ売ろうとしているから駄目なんです。だから、そこ(テレビ事業)だけは許さない」――。

 この問答の伏線は、家電を主に扱う社内カンパニー、アプライアンス(AP)社の品田正弘社長が19年11月に発表したテレビ事業改革案にある。市場縮小と中国メーカーの安価攻勢に苦しむテレビ事業を収益性も成長性も低い不採算事業と位置付け、下位機種や非コア技術については他社との協業や生産委託といった構造改革を行うと表明。そして21年度のテレビ事業の赤字解消を目標に掲げた。

 冒頭の津賀社長の発言は、AP社が発表したこの改革案を改めて強調した形だ。津賀社長は11年にテレビ担当役員(当時のAVCネットワークス社社長)に就くと赤字を垂れ流すプラズマテレビの縮小(その後撤退)を断行した張本人であり、昨今のテレビ担当役員の見通しがあまりにも甘かったことへのいら立ちがよみがえったのかもしれない。