新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。そんな変化の激しい現代において「子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる親は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学、心理学、脳科学等、さまざまな切り口の資料や取材を元に「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
「家での勉強のしかた」から「遊び」「習い事」「運動」「食事」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー。100の「してあげたいこと」を実践するにあたっては、さらに詳細な「421の具体策」で、実際に何をどうしてあげればいいのかまで丁寧に落とし込んでいる。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。

「子どもの脳を耕せる」たった1つの親の習慣Photo: Adobe Stock

1つの習慣:「音読」をさせてあげる

 本を読むとき音読をすると、脳内で「読む」「話す」「聞く」という作業を同時に行なうことになるため、とくに、前頭葉という部分が刺激を受けます。

 前頭葉は、記憶、意欲、自制心をコントロールするところです。つまり、音読によって前頭葉を刺激すると、記憶力、集中力、注意力などが鍛えられます。

 また、音読をすると、脳内に「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが多く分泌されるようになり、精神が安定するともいわれています。

 では、子どもがうまく音読をできるようにするには、親はどうすればよいでしょうか。

手を止めて聞いてあげる

 子どもが音読をするときは「ながら聞き」はNG。親は手を止めて聞いてあげます。

すぐにほめる

 読み終わったらすぐに「ちゃんと読めたね」「えらいね」とほめます。脳科学者の川島隆太教授によると、親がすぐにほめると、それだけで子どもの脳は活性化し、やる気がアップするといいます。

「勉強前」が効果的

 すぐにほめることで脳が活性化し、やる気もアップするため、音読は勉強前のウォーミングアップに最適です。川島教授の研究によれば、音読をすると「記憶」の容量が2~3割ほど増えるそうです。

 とくに子どもの場合は脳の器が大きくなり、記憶力だけでなく、創造力や論理的な思考力、自制心なども伸びていくと川島教授はいっています。

間違えてもその場で訂正しない

 30年にわたり、小学生~高校生の作文指導に携わっている「言葉の森」の代表、中根克明氏によると、子どもが低学年のうちは、言葉の読み方や区切り方を間違えたとしても、その場で訂正せずに最後まで聞いてあげるべきだといいます。

 もし、つっかえてしまったところで音読を中断させて間違いを指摘すると、子どもはその後緊張して読むようになります。これでは子どもが「読むことが苦痛になり長続きしなくなる」と中根氏は指摘します。

 中根氏によると、子どもが間違ったところを指摘する代わりに、子どもが読んだ後に親が同じところを音読し、子どもに聞いてもらうとよいそうです。親も最後まで楽しく、そして正しく読めていれば、自然と子どもも間違いを正すようになるといいます。

 少々間違えたくらいで文章全体の意味が大きくくずれることはないので、「まずはほめてあげること」「なによりも子どもが楽しく取り組めること」が最優先だと中根氏はアドバイスしています。

くりかえし、スピードを上げる

 川島教授によると、読むスピードを上げることで頭の回転速度が上がるそうです。

 脳に負荷をかけると前頭葉がますます活性化し、文章を理解するスピードがアップします。

 目から文字情報を入れて、声に出して読む、つまりインプットとアウトプットをすばやくくりかえすことで、目で読んだ記憶と声に出して読んだ記憶がつながりやすく、記憶力も高まっていきます。

(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』の内容を抜粋・編集したものです)

参考文献

「勉強好きに大変身! ヒント50」(「プレジデントFamily」2016 夏号)
齋藤孝、川島隆太「脳トレの川島隆太さんが実証データ『速音読で、脳の回転速度が速くなる』」(致知出版社website, 2018/8/4)
森川林(中根克明)「低学年の音読は、間違えて読んでも直さない」(対話型オンラインスクール言葉の森 website, 2010/1/13)