海外の節税#20Photo by Toshiaki Usami

日本一富裕層に詳しいという税理士法人ネイチャーの代表税理士、芦田敏之氏。特集『海外の節税 富裕層の相続』(全21回)の最終回では、富裕層とカネの最新の動向を聞くとともに、銀行や証券会社など金融機関と税理士業界の微妙な関係が、富裕層にもたらす驚きの影響について語ってもらった。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

日本一富裕層に詳しい税理士が
金融機関と税理士業界の関係を激白

――「日本一富裕層に詳しい税理士」というキャッチコピーを掲げています。

 企業オーナーなどの税金対策に加え、資産運用もお手伝いしています。お客さまは個人に特化しており、資産100億円規模の企業オーナーが多いですね。中には上場企業のオーナーで資産数千億円の富裕層もいますが、その一方で、年収500万円クラスのお客さまもいます。これから富裕層を目指そうという方です。

 当社は80人規模の税理士法人であり、数多くの富裕層のお客さまがいるので、日本一富裕層に詳しいというわけです。

――金融機関との提携も多いようですね。

 国内外の金融機関に加え、海外のプライベートバンク、不動産デベロッパーと提携しています。特に、地域金融機関は融資環境が厳しいので、富裕層ビジネスに力を入れていますが、銀行口座はあってもなかなか接点がないケースも少なくありません。

 そこで、われわれと組んで富裕層の開拓を行っています。私自身、米マスターカードの最上位クラスであるラグジュアリーカードのオフィシャルアンバサダーを務めており、富裕層の方へのブランディングを行うという役割も担っています。

――富裕層案件は銀行経由が多いのですか。

 多いですね。結局のところ、富裕層と一番接点があるのは銀行です。銀行には安心感があるのと、企業オーナーは本業との絡みで銀行とさまざまな接点がありますから。一方、証券会社は、富裕層のグリップという点では銀行に比べると弱いと思います。どうしても、預金口座と貸付金がないところは、関係が希薄になりがちです。

 加えて、富裕層は自分を担当している税理士を、他の富裕層に紹介することはほとんどありません。やはり、自分の資産のことを熟知している税理士を紹介することには、二の足を踏むのでしょう。

――金融機関との提携が税理士法人にとっては必須なのですね。そして、金融機関の提案に対して税務的なアドバイスを行うと。

 その通りです。ここで注意しておいていただきたいのが、金融機関の富裕層に対する提案書を見ると、税務的なリスクがあるアグレッシブな提案をする金融機関が一部あることです。富裕層は複数の金融機関と付き合っているので、他の金融機関よりも良い提案をしようと知恵を絞ります。

 反面、複雑で高度な税金対策を提案しがちなのですが、中には税務リスクがある提案を見掛けることがあります。ところが、金融機関と提携している税理士はリスクについて、なかなか指摘することができません。

――なぜ指摘できないのですか?