最強の節税#1Photo:metamorworks/gettyimages

ここ数年、国税が目配りを強化してきた富裕層。だが、キャピタルフライトの抜け道はまだまだ残されている。その一つが、仮想通貨だ。また、シンガポールなどへの移住を使った節税スキームの行く末は?特集『最強の節税』(全22回)の#1では、富裕層を多く顧客に持つ税理士たちが、普段は言えない富裕層の最先端の節税事情を覆面座談会で赤裸々に語った。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

座談会参加者プロフィール(仮名)
野村信二 税理士
小田嶋 薫 税理士。国税出身
冬月礼司 資産家の資産運用ビジネスに従事
出口 悟 シンガポール在住税理士

「節税がんばるのは
『お金がない富裕層ワナビー』が主力」

――国税がここ数年ターゲットにしている富裕層ですが、最近の彼らの節税に対する意識はどうなんでしょうか。

小田嶋 まず「なんちゃって」と「ホンモノ」は違いますよね。IPO(新規株式公開)・(※1)ICOで5億~10億稼いだ人と、昔からの資産家で何百億何千億の資産がある人は全然違う。後者は投資のリターンも2%でいいし、節税もクソもない。節税のニーズがあるのは、ニュー富裕層と呼ばれる前者ですね。

野村 うん、ほんとの富裕層はいまさら節税うんぬんじゃないですよね。節税ってお金がない人がやるもんですしね。ニューカマー系富裕層ワナビーあたりがアグレッシブに頑張ってる感じがする。

冬月 上場株式持ってるのかキャッシュ持ってるのか、資産によっても違いますよね。資産が現預金で10億円以下の人はアグレッシブな人も多いかな。

小田嶋 「(※2)総合課税になるような税区分ではなく、できれば(※3)分離課税したい」という人もいれば、「キャピタルフライトしたい」とか「まったく税金払いたくない」という人も、いろいろいて。ただ、こういう人たちはしょせんわなにかかったエゾジカみたいなものなんですよね。ほんとの“クジラ”はお金をかけて専門家に周到なスキームを組ませて、何年もかけてエグジットしてますから。クジラの節税スキームである、(※4)パナマ文書の実物を見せてもらったことがあるんですけど、すでに二十何年前に弁護士や会計士たちがすごいスキームを作っていて。「こんなことを考えている人がいたのか」って自信なくして体調崩しましたもん。

――キャピタルフライトの手段やスキームはどんなものが多いのでしょう。

野村 仮想通貨の登場で相当変わったんじゃないかな。国税にばれようがない方法ができたからね。

小田嶋 ですね。