「国際化志向」の最先端の取り組み
学校の人気は東京大・京都大と医学部に何人合格させたかで左右されるものだが、トップ校の中では、海外の大学に直接進学する傾向も出ている。自分が何を勉強したいのか、将来社会で何をしたいのかを考えた末の帰結であり、極端な話、東京大に入学後、海外大学の合格を夏休み前にもらったら、そのまま中退する例も出ているほどだ。
海外大学直接進学の実績では、渋谷教育学園幕張が最大級といっていい。イェール大学の入試担当者が立ち寄って説明会をするほどアメリカでも卒業生が活躍しているし、教員が直接アメリカの大学を訪問するなど、進学を後押しする雰囲気が濃厚にある。兄弟校の渋谷教育学園渋谷も同様だ。国立大附属の超難関校であるお茶の水女子大学附属、筑波大学附属、筑波大学附属駒場、男子校では、東京大合格者数全国一を四半世紀にわたって維持している開成でもそうした動きは目立つ。
国際教育の1つの姿として、ここ数年で急速に知れ渡ってきたのが国際バカロレア(IB)。その認定校も年々増えている。経験ある専門教員は高給であり、授業も少人数で行うことが多いこともあって、学費もそれなりに高額となる。
私立では、埼玉の昌平、茨城の茗溪学園、国際先端クラスを設置した開智日本橋学園、国語・音楽・体育を除く全科目を英語で行う玉川学園などがIBプログラムを導入している。国立のIB教育の総本山的な存在である東京学芸大学附属国際中等教育学校の人気がここに来て高まっている。
カナダ・ブリティッシュコロンビア州と始めた文化学園大学杉並が先鞭をつけた「ダブルディプロマ」対応校はいまもっともホットな存在だろう。ダブルディプロマ(DD)とは、日本と海外双方の高校卒業資格を取得できるプログラムのこと。相手先の学校がある州で認可された教育も授業に取り入れることで、国内に居ながら3年間で外国高校の卒業資格を得られる。つまり、海外大学進学が選択肢に入ってくる。
2020年度からDDプログラムを始める女子校が3校ある。カナダ・アルバータ州と実施するのが国本女子。アイルランドとニュージーランドの4校と実施する麹町学園女子は「東洋大学グローバルコース」も人気で、ここ数年、人気が急浮上している。次いで実施に踏み切った神田女学園は、アイルランドに続き、ニュージーランドの受け入れ校との最終調整を進めているところだ。
国際教育に熱心な学校は、帰国生の受け入れに積極的だった学校が多い。いまでも帰国生比率の高い学校としては、女子校では頌栄女子学院と洗足学園、共学校では啓明学園と東京都市大学付属が挙げられよう。やはり在校生の2割程度いると、相当生活文化が変容する。