開成学園新校舎予想図
創立150周年記念事業で2021年夏完成予定の新校舎予想図  画像提供:開成学園

40年に及ぶ柳沢幸雄前校長との付き合い

 新校長の野水勉先生と前校長の柳沢幸雄先生(現・北鎌倉女子学園学園長)との付き合いは実に40年に及ぶ。先輩と後輩のつながりが強い、開成らしいエピソードである。

――柳沢幸雄先生が着任された2011年は、3月11日に東日本大震災が発生して大変でした。その頃、座談会をしたのを覚えています。今回はコロナの時に野水先生と交代されて。

野水 私は今年の4月に就任しましたが、前任の柳沢先生は離任した時もエポックメーキングな年だとおっしゃっていました(笑)。

――お二人は、結構古くからのお知り合いですよね。

野水 柳沢先生とは6学年違うので、開成在校中にご一緒したことはありません。

 先生と私が進学した東京大学では、学部2年生の後半になると専門分野の授業が始まり、3年生で本郷キャンパスに進むと、大学祭(五月祭)があります。工学部の応用化学に進学が決まった仲間でこれに参加しようとなり、環境問題のグループに私は加わっていました。

 当時は4大公害裁判が大きな社会問題で、応用化学を学ぶ者として何か貢献できないかと、駒場の学生のために自主講座を開いていた西村肇先生の研究室に行きましたところ、そこに柳沢先生が大学院生として在籍していました。

 柳沢先生は学部時代に学習塾をやっていて、私の弟がそこに通って直接教わっていました。少ない名字なので、弟のことを覚えていて、お互い開成の先輩後輩だということが分かり、付き合いが始まったということです。

 柳沢先生は大学院時代にまた別の塾を始められ、私が大学院に進学した頃に、私も2年間ほど講師を頼まれ、化学を担当しました。

――再会は、ハーバード大学ですね。

野水 はい。私は修士号を取った後、原子力関係の仕事に5年ほど従事して、名古屋大学で助手になり、5年たったところで博士号を取得しました。その直後、講座の教授のところを訪れたハーバードの先生(講座教授の昔の留学先)に誘われて、1年半留学することになりました。当時、柳沢先生と年賀状のやり取りはしていたので、向こうにいらっしゃることは知っていました。空港に迎えに来ていただき、宿舎も事前に探してもらうなど、家族ぐるみで大変お世話になりました。

――柳沢先生に以前、マイケル・サンデル教授の「ハーバード白熱教室」のような授業をテレビの番組でやっていただいたことがあります。開成でもやられたらしい。当時、ハーバード大学准教授だった柳沢先生のアメリカでの授業を聴かれたことはありますか。

野水 英語による授業を聴いたことはないのですが、日本語補習校で保護者向けに柳沢先生が日本語で話されたことがありました。当時言われたのは、英語による説明を補うためのオーバーヘッドプロジェクター(OHP)スライド(現在汎用されているパワーポイントスライドに相当)をたくさん用意するということでした。その昔はOHPスライドでストーリーが分かるように作っていたということで、さすがだなと思いました。

 現地での苦労話としては、英語のディスカッションになると厳しいので、学会では最初に質問するんだとおっしゃっていました(笑)。

開成の現行の高校校舎。階段の壁面をキャンパスに、創立者である
佐野鼎(かなえ)が従者の一人として随行した遣米使節団の様子から始まって、現代にいたる壁画が美術部を中心とする生徒によって描かれた。
新校舎完成後は取り壊しが決まっている現行の高校校舎。階段の壁面をキャンパスに、創立者である 佐野鼎(かなえ)が従者の一人として随行した遣米使節団の様子から始まって、現代にいたる壁画が 美術部を中心とする生徒によって描かれた。

※第2回に続く