
辻広雅文
第62回
日本のメデイアだけに触れていると、世界は財政出動一色に染まったかのようだが、実は震源地の米国にして違う。共和党の「小さい政府」信奉者だけではなく、経済学者たちからも疑問は呈されている。

第61回
先週、「銀行国有化できぬゆえに米国の金融危機は長期化する」という題名のコラムを掲載したら、批判を含むさまざまな意見をいただいた。そのなかで最も考えさせられたのは、「銀行国有化は社会主義的政策の到達点ではないか」という指摘だった。「銀行国有化」を持ち出した私の論理を、もう一度整理しておこう。

第60回
金融危機を打開する最も有効な方法は、銀行国有化である。だが、自由主義経済の盟主たる米国では、民主党政権でも、それは唾棄すべき政策であり、それゆえに出口が見えない。

第59回
激しい雇用調整が進むなかで、「ワークシェアリング」がにわかに脚光を浴びている。大手新聞の社説も雇用問題解決の糸口になりえるとこぞって取り上げ、工夫次第では正規社員と非正規社員の格差まで是正できる可能性にすら言及している。だが、立場の異なる人々が救いを求めるかのごとくに賛意一色に染まる主張や制度ほど、落とし穴が隠されているものである。

第58回
貧困の撲滅は多くの組織、制度、さらには人々の内面にまで関わる極めて難しい総合改革だ。だからこそ、自民、民主はともにマニフェストに組み込み、コミットメントする責任がある。

第57回
あらゆる企業にとって“秘中の秘”ともいえる商品の原価を、ネット専門保険会社のライフネット生命が公表した。タブーを破った出口社長にその決断の理由を聞いた。

第56回
雇用調整が、凄まじい速さで進行している。とりわけ、非正規社員の悲惨な事例は枚挙の暇がない。ついに日産自動車は、国内の派遣社員2000人と期間従業員50人の契約を来年3月までにすべて打ち切ることにした。非正規社員は、ゼロになる。日本企業の経営は、明らかに変わった。

第55回
景気の悪化が日々、加速している。吉川洋氏は戦後最長の景気後退になると予測し、野口悠紀雄氏はマイナス5%成長に転落する危険性を指摘する。未曾有の事態に日本は「賢明な支出」を選択できるのか。

第54回
「派遣切り」という言葉が、頻繁にメデイアに登場する。新入社員の内定取り消しが、後を絶たない。雇用不安の深層を、NPO自立生活サポートセンター・もやい事務局長の湯浅誠氏に聞いた。

第53回
金融機能強化法が景気悪化を防ぐために有効かどうかの議論はここでは横に置こう。指摘したいのは、政府と地銀の堕落。同法復活による金融システム肥大化のリスクである。

第52回
金融危機でわれわれが得たのは、リスクフリーの金融商品など存在しないという教訓である。その教訓に、米国債が含められても不思議ではない。神話は疑うものが多数になれば、倒れる。

第51回
株式市場の大混乱に度を失った政府が、「空売り」規制を強化した。空売り規制強化には、政府が願うような株価の暴落を防ぐ、市場安定化効果が本当にあるのだろうか。

第50回
円高とともに円資金の巻き戻しが進む今になって、日本の円安政策がいかに世界に投機資金をばら撒いていたかが分かる。麻生首相は公的資金注入の教訓など語っている場合ではない。

第49回
日本政府が世界に向けて、久々のヒットを放った。「国際金融安定化のためのIMF緊急ファシリテイ構想」がそれだ。発案した財務省の真意を探る。

第48回
世界中の金融機関を経営破綻の淵に追い込むほど、なぜ、サブプライム関連の証券化商品は暴落し続けているのか。どうして、証券化商品市場には買い手が現れないのか。市場が備え持つはずの底値発見機能や価格形成機能が、不全のままなのはなぜなのか。著書『「質の時代」のシステム改革』(岩波書店)で、「市場の質理論」を展開した矢野誠・京都大学教授(兼,慶應義塾大学客員教授)に聞いた。

第47回
昨年燃え盛った「消えた年金」問題の解決のめども立たないうちに、「消された年金」問題が火を噴いた。社会保険庁のずさんと腐敗が暴かれる陰に、本質的な問題が隠されていると思われる。それは、霞ヶ関官僚の法制度の改正と、それを受けて全国の徴収現場で職員たちが執行する力との大きな乖離である。社会保険事務所における現場実務も能力も考慮に入れずに、ひたすら机上で制度設計に励む厚生労働官僚の罪、と言ってもいいだろう。

第46回
米国発の金融危機が世界を恐怖に陥れている。いかなる混乱が、どれほど続くのか、今の時点では誰にも予見しがたい。それでは、金融危機収束後の世界を構想することは可能だろうか。池尾和人・慶応大学教授は、「2010年代は、世界中が低成長に陥り、質素で退屈で憂鬱な時代になる」と予測する。(聞き手/辻広)

第45回
経済認識に信頼がもてない政治家が、官邸の主になろうとしている。麻生氏固有の問題もあるとはいえ、政治家を育てるインフラを持たない日本の欠陥は深刻だ。

第44回
米金融当局の高いリテラシーへの期待の表れなのか、リーマン処理の決断を評価する声が日本のメディアで増え始めている。だが、その期待は裏切られる可能性もある。

第43回
民主党の政権担当能力を疑わざるを得ない事象は「ねじれ国会」のなかでたびたび発生した。そのなかで私は、多くの有権者、もしかしたら当事者たちも忘れてしまったかもしれないある案件を、重く考えている。
