先週、「銀行国有化できぬゆえに米国の金融危機は長期化する」という題名のコラムを掲載したら、批判を含むさまざまな意見をいただいた。そのなかで最も考えさせられたのは、「銀行国有化は社会主義的政策の到達点ではないか」という指摘だった。
「銀行国有化」を持ち出した私の論理を、もう一度整理しておこう。
1.米国でバッドバンク構想が浮上している。金融機関から不良資産、不良債権すべてを除去し、悪化の一途を辿る金融システム危機から脱出するために極めて有効でやるべき解決方法である。
2.だが、「やるべきこと」と「できること」は違う。昨年夏、米政府が金融システム危機の解決に公的資金の投入を表明した際、ポールソン財務長官は、この最も有効な方法――不良資産の買い取リを政策の核に据えた。それが、果たせず、銀行への資本注入に政策が変更されたのだ。
3.なぜなら、当初から指摘されていた買い取り価格問題を解決できなかったからだ。不良資産を高く買い取れば、買い取った政府つまり税金に損失発生しかねない。逆に、厳しい査定をすれば銀行側に損失負担がのしかかって、資本不足に追い込みかねない。
4.そもそも、市場が暴落するさなかに適正価格など測定できるものではない。そして、今なお続く本質的問題は、市場が壊れ価格発見機能が失われたままであることだ。
5.とすれば、銀行を国有化してしまえばいい。民間(銀行)と国が損失負担を巡って利害が発生、衝突するから買い取り価格の公正さが問題となる。それならば、いったん銀行をまるごと国有化し、不良債権処理と再生を同時に進め、民間銀行としてグッドバンク部分を切り出せばいい。残った部分が、バッドバンクである。
実際、市場経済の総本山である米国でも、マネーセンターバンクの破綻を恐れる人々の口の端に「銀行国有化」は上りつつある。