日本政府が世界に向けて、久々に放ったクリーンヒットだった。タイミングがよく、狙いどころも的確である。しかも、その好打にはさまざまな意図が読み取れて、興味深い。
日本政府は10月のG7で、「国際金融安定化のためのIMF緊急ファシリテイ構想」を提案した。日本が潤沢な外貨準備金を、中国や産油国とともにIMF(国際通貨基金)に貸付ける。その資金をIFMが世界的金融危機に翻弄される中小国、新興市場国に融資する、という新ファンド構想だ。発案したのは、むろん財務省である。
日本政府の提案直後から、金融危機の荒波に耐えかねたように、アイスランド、ハンガリー、ウクライナといったEU周辺の新興国がIMFへ駆け込んだ。この三国に共通するのは、経済運営を海外マネー、とりわけユーロ圏からの資金調達に頼っていたことだ。
その命綱である海外マネーが、先進国の金融危機、信用収縮によっていっせいに引き上げられている。三国の通貨はいずれも急落、株式市場も暴落、金融機関の経営危機も次々と表面化した。
ところが、通貨を防衛買いしようにも、金融機関に資本注入しようにも、財政も経常収支も赤字であり、海外からの資金流入がなければ不可能だ。不可能なままに放置すれば、国家が破綻しかねない。現に、アイスランドの主要銀行は資金繰り難に陥り、円建て債(サムライ債)の利払いが、期限が来ても行われていない。このまま猶予期間を過ぎればデフォルト(債務不履行)である。
新興国の国債や金融機関発行の債券がデフォルトを起こせば、それらを組み込んだ金融商品の購入者たちに損失を与え、世界中の市場に混乱を引き起こす。その震度の大きさは、リーマンブラザースの破綻で体験したばかりである。