
辻広雅文
第82回
公債残高が10年前の2倍に迫る勢いにもかかわらず、民主党のマニフェストには財政再建に関する文言は一つもない。財政再建か景気回復かに苦悩した元首相の「死刑に値する」という呟きは、歴史の波間に漂うのみである。

第81回
「沖縄で感染が突出」「感染者はすでに5万人」。“第二波”到来が指摘される新型インフルエンザを巡っては、様々な報道が独り歩きしている。厚労省医系技官の木村盛世・医師は、そもそも今の政府のやり方では実態把握は不可能と警鐘を鳴らす。

第80回
政権選択の時が迫っている。自民党は与党としての政権運営能力を誇示し、民主党は閉塞状況を打破する変革力を強調する。では、いずれの党が信頼に足るのか。その格好の判断材料は、農業政策であろう。

第79回
昭和30年代の通産官僚の奮闘を描いたTBSドラマ「官僚たちの夏」は確かに私たちの胸を打つ。しかしそこで描かれた世界はあくまで発展途上国型の開発主義経済である。感傷に浸り、市場の時代に立ち向かおうとしない姿勢は危険だ。

第78回
結論から言えば、日本の経済対策がバラマキに陥るのは、所得を再配分すべき分野や人々を特定できないからだ。社会保障背番号を導入し、効率的な経済政策を運営しようとしてこなかった政府には大きな罪がある。

第77回
企業が大事故を起こす原因となった組織的特質は、企業風土というよりも歴代経営者が作り上げた組織文化と表現すべきものだ。宝塚線脱線事故を招いたJR西日本歴代経営陣の責任は極めて重く、社長に集約させて済むものではない。

第76回
政財界の利害が輻輳した日本郵政社長を巡る人事騒動――。ある政治家と自動車メーカーの超大物財界人を中心に、その経緯を改めて整理すると、これまで伝えられてきたものとはずいぶん違う構図が見えてくる。

第75回
前回に続きエクイティ・デカップリングの具体例を紹介する。今回はウルフパックだ。デリバテイブを駆使して、大量保有報告義務をかいくぐる。そして突如、大株主として登場、企業を恐怖に陥れるのである。

第74回
前回は、エクイテイ・デカップリングというヘッジファンドが得意とする投資行動が、会社法の根幹までを揺さぶっている現状を紹介した。今回は、より具体論に入り、エンプティ・ボーディングという戦術を解説しよう。

第73回
証券市場の発達は、企業価値の増大に無関心であるばかりか、毀損させる行動にまで出る株主の台頭をもたらした。例えば、ヘッジファンドだ。この問題を突き詰めると、会社は誰のものかという根源的問いに行き着く。

第72回
1946年、P.F.ドラッカーは『企業とは何か 』を刊行した。題材はGMであり、テーマは「マネジメントと組織」だった。この著作は、世界中に多大な影響を与えた。だが、GMだけは受け入れなかった。

第71回
厚労省の新型インフルエンザ対策は犯罪的ですらある、と医師であり現役の厚労省医系技官である木村もりよ氏は告発する。公衆衛生学を軽視する日本は、感染症対策においては途上国に過ぎない。

第70回
米銀に対するストレステストの結果がネガティブサプライズとならなかったことから、米国で景気底打ち期待が高まっている。だが、白川・日銀総裁の言葉を借りれば、それは「偽りの夜明け」とも言うべきものだ。

第69回
米国大手金融機関の第1四半期決算が、先週発表された。予想されていた通りに、好業績である。だが、内実は苦しく、特殊な会計処理などによって、実力以上の決算を作り上げたと見たほうがいい。

第68回
橋下・大阪府知事の「ぼったくりバー」批判で「国の直轄事業と地方分担金」の問題が改めてクローズアップされている。橋下氏の指弾は核心ではないが、この問題は確かに現代日本のいびつさを象徴している。

第67回
経済政策に関わる者たちは「俗流化されたケインズ思想」の奴隷となったことに無自覚でいる。それゆえ、不況の原因を誤解する。池尾・慶大教授は、「日本は2部門経済であり、原因も解決策も異なる」と強調する。

第66回
不況克服のためには、最新の経済学の研究成果を踏まえた有益な分析ツールが必要だ。だが、原始ケインジアンが蔓延る日本では、その重要性が理解され難い。池尾・慶応大教授に、世界標準の経済学を聞いた。

第65回
大衆薬の通信販売を大幅に制限する厚労省の省令は、ネット販売を狙い撃ちにしたものと見られがちだが、実はそれは副次的な目標だ。既得権者の真の狙いは小売りの新規参入組の勢いを削ぐことにある。

第64回
最初に断っておけば、筆者は竹中平蔵元総務相が設計した郵政民営化には賛成ではない。郵政改革は必要だと考えているが、現在の4分社方式は矛盾を内包しているし、そもそも郵便局の統廃合に手をつけない改革はまやかしだと思っている。だが、「かんぽの宿」を巡る既得権益の巧妙かつ公然たる反乱は、目に余る。率直に言って、この問題に関しては、日本郵政の主張が正論であり、鳩山総務相に理はない。騒動の原点に戻って、誰が道を誤らせたのかはっきりさせよう。

第63回
政府は、世界同時不況で経営難に陥った事業会社に公的資金による資本注入支援を行う準備を進めている。かつて産業再生機構COOとして数々の企業再生に携わった冨山氏に、公的支援のあるべき姿を聞いた。
