
小黒一正
アベノミクスの功罪とは何か。評価や総括はこれから行われることになろうが、異次元緩和(量的・質的金融緩和)の象徴であった日銀のバランスシートの現状については、あまり広く認識されていない。

コロナ危機は、我々の社会・経済活動に甚大な影響を及ぼしているが、財政再建の目標にも影響が出始めている。

新型コロナウイルスの感染拡大は、世界の社会活動や経済活動に大きな影響を及ぼしているが、この問題はいずれ終息するはずだ。そのとき、日本はコロナ以前に抱えていた課題に再び直面する。その課題とは、財政・社会保障の改革である。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は2020年度第2次補正予算を閣議決定した。

新型コロナウイルスは、二つのルートで人命を脅威に晒す。一つは重症化による死、もう一つは外出制限や営業自粛の長期化による経済的死だ。緊急事態宣言が解除されても、感染が再び拡大し、医療崩壊を防ぐために自粛が再開される可能性もある。

新型コロナウイルスの感染拡大が日本経済に及ぼす影響を把握するためには、大規模イベントや不要不急の外出等に関する自粛要請コストについても整理する必要がある。

2019年の増税ショックは、14年増税時よりも小さい可能性
先般、内閣府は「四半期別GDP速報」(2019年10~12月期2次速報値)を公表した。このデータから結論を述べると、19年10月の消費増税が増税期の実質GDP成長率に及ぼした影響は、14年4月の消費増税が及ぼした影響よりも小さかった可能性がある。

内閣府が発表する公債等残高の将来予測は本当に妥当なのか
2019年10月の消費増税後も依然として財政は厳しい。財政の将来予測で一般的に利用されるのは内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」(中長期試算)だ。内閣府は、20年1月の経済財政諮問会議で最新版の中長期試算を公表した。

政府は財政・社会保障改革の本気度を示せ
2020年が始まったが、昨年の国内出生数は86万人となり、人口動態統計上、1899年以来初めて90万人を下回った。人口減少が加速しており、日本財政を取り巻く環境は一層厳しさを増している。

なぜ公立病院の再編統合が必要なのか
国の財政と比較し、マクロ的に見る限り地方財政に余裕があるのは確かだが、厳しい財政状況に直面する自治体も増えてきている。この一つの象徴が、2019年4月に財政危機の宣言を行った新潟県だろう。

甘い政府見通しは危険、膨張する社会保障費にどう立ち向かうか
財政再建の「本丸」は社会保障改革だが、政府は「全世代型社会保障検討会議」を設置し、全世代が安心できる制度改革の方向性を議論し、来夏までに最終報告をまとめる方針だ。その際、政府が改革議論の参考に位置付けるのは、2018年5月公表の「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」だが、この推計を前提にするのは一定のリスクを伴う。

2019年財政検証を読む、年金が抱える「暗黙の債務」5年で110兆円超も膨張
財政赤字が恒常化する中、政府債務は1000兆円超に達するが、さらに見えない債務も存在する。その一つが、賦課方式年金が抱える「暗黙の債務」であり、この債務は「積立方式であれば存在していた積立金と、実際の積立金との差額」として定義される。

2019年の財政検証を読む 低年金問題をどう解決するか
年金財政の健全性は、年金財政の健康診断に相当する「財政検証」を少なくとも5年に1度実施することで確かめる。厚労省は8月下旬に2019年の財政検証を公表した。

対立激化が予想される米中貿易戦争の狭間で日本はどう生き抜くか
米国と中国の覇権を巡る戦いが2018年以降に顕在化した。この一つの象徴が、18年7月、米国が輸入する中国製品のうちロボットや工作機械など約800品目に約340億ドルの制裁関税を発動し、中国も同規模の報復関税を課したことだった。

“老後に2000万円必要”試算でもまだ楽観的増加する貧困高齢者
「老後に2000万円の貯蓄が必要」という金融庁の報告書が波紋を広げている。高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)では、公的年金の受給があっても毎月の赤字は約5万円となり、夫婦で95歳まで生きる場合には約2000万円(=約5万円×12カ月×30年)の貯蓄が必要となる可能性を指摘した。

社会保障費負担増が地方公共団体の財政直撃問われる国と地方の役割
新潟県庁が「県財政の緊急事態」を宣言し、行財政改革有識者会議の初会合が5月7日に開催された。宣言の理由は、標準財政規模に対する県債残高が約317%(全国平均は約195%)と47都道府県のうちワースト1位で高く、2021年度末には財源対策的基金(県の貯金に相当)が枯渇する見通しが高いためだ。

年金「財政検証」の鍵経済前提シナリオに見る実現確率の低い"想定"
国民年金法・厚生年金保険法において、政府は少なくとも5年に1度、年金財政の健康診断に相当する「財政検証」を実施し、その内容を公表することが義務付けられている。2019年は実施年である。

第2回
安倍首相は、消費税増税がマクロ経済に及ぼす影響を検証する場の設置を指示した。平成版・金融危機などが起こらない限り、予定通り実施するのが望ましい。増税を先送りするのは以下の3つの理由から誤った政治判断である。
