IoTによってもたらされる変革は、製造業のみならず、物流、交通、医療、防犯、防災など非常に多岐にわたるが、本稿ではその中の1つである製品のスマート化に焦点を当てる。それは、単に製品の機能や性能が付加されることを意味するのではなく、ビジネスモデルの変革が促されることを意味する。
製品のスマート化とは何か
「スマート」には、「賢い」「洗練された」などの意味があるが、コンピュータによる制御・処理能力を搭載したといった意味もある。製品のスマート化とは、情報通信技術を駆使し、状況に応じて制御・運転を行ったり、運用を最適化したりするインテリジェントな機能を製品に組み込むことを意味し、こうした製品を「スマート・コネクテッド・プロダクト」と呼ぶこともある。
例えば、電気やガスの検針で用いられる計量器にデジタル計測機能と通信機能を持たせ、自動検針を行うのがスマートメーターである。スマートメーターは、検針の無人化による人件費の削減や、地域や建物単位での電力供給の制御による停電の回避といった事業者のメリットもさることながら、そこで収集されるデータを各家庭の省エネ、防災、防犯などに活用することで利用者にもメリットが享受されることが期待されている。
製品のスマート化は、これまでもM2Mなどの技術を用いて資源探査や製造業の工場などで利用される計測機器や制御機器の分野で進められてきた。昨今では、IoTの台頭によりインターネットを通じて遠隔地との通信が可能となり、スマート化の対象が自動車、家電、住宅、衣類・靴といったより身近な製品へと一気に拡がった。また、ビッグデータ分析、認知技術、AIなどと組み合せられることで、監視や制御だけでなく、予兆検知、自動運転、自律的な最適化、アドバイスの提供といった高度な活用への期待が高まっている。
製品のスマート化の
パターンとその価値
製品のスマート化がもたらすメリットや促される変革を考える前に、スマート化のタイプを分類しておこう。ITRでは、製品のスマート化をデータの流れに着目して、①インターナル型、②インサイドアウト型、③双方向型、④フィードバック型の大きく4つに分類している(図1)。
これら4つのタイプは排他的なものではなく、組み合わされることもある。