「取り返しのきかない失敗」と
「取り返しのきく失敗」
前回は、右肩上がりで成長を続ける訪日客へのインバウンド施策に、データを積極的に活用すべきという趣旨で、迎える側の日本人が、すべての訪日客に画一的なサービスや商品を押しつけるのではなく、彼ら一人ひとりの属性や行動から、必要な情報を探り出して提供すれば、自ずと日本のインバウンド市場は伸びるだろうと書きました。
訪日客に知られざる日本を体感してもらうためには、思いつきや、ありきたりな先入観に頼るのではなく、データや事実に基づいたトライ・アンド・エラーが必要なのですが、どうやら日本企業の多くは失敗を恐れるあまり、臆病になっているように思えるのです。
こんな時こそ、失敗には「取り返しのつかない失敗」と「取り返しのきく失敗」があることを思い出すべきでしょう。
前者は、社会や顧客との信頼に大きなダメージを与える失敗であり、絶対に避けなければなりません。しかし、次の挑戦に結びつく失敗はむしろ推奨されてしかるべきでしょう。データ分析につきものの試行錯誤は、まさに後者にあたる代表例です。
データの扱いに慎重であることは結構なことですが、躊躇するとなると話は別です。きちんと対処すれば回避しうるレベルの失敗を恐れるあまり、データ活用そのものを諦めるのは本末転倒といわざるを得ません。
当然のことながら、個人情報に紐づくデータは、それを生み出したユーザー自身のものです。しかし、この事実を軽く見ている人が多いのもまた事実です。