「荷主」とは誰か?

 それはトラック運送業界の多層構造に由来する「そもそもトラック運送事業者にとっての“荷主”とは誰か」という問題だ。

「荷主」という言葉から通常イメージするのはメーカーや卸など「モノをつくったり、売ったりする企業」だろう。しかし、より厳密には「運送の委託元」を意味する。

 トラック運送業界は、元請・下請の多層構造が特徴である。例えばメーカーA社の物流業務を担う元請として運送大手B社があり、その下請として中小業者であるC社やD社が存在する。この場合、C社やD社にとっての“荷主”はB社であり、つまりは同じトラック運送業者ということになる。ちなみにメーカーや卸など本当の荷主を指して「真荷主(しんにぬし)」と表現することも少なくない。

 問題はここだ。運送事業者から「荷主がちゃんとした運賃を払ってくれない」「荷主が値上げに応じてくれない」といった話をよく耳にする。

 では、彼らが言うところの“荷主”とは一体誰なのか。ちゃんとした運賃を払ってくれないのは、実は彼らに仕事をまわしている元請の同業者なのかもしれない。業界の多層構造を考えるとき、少なくとも「真荷主」と「トラック運送事業者」という二元的な構図だけでは“真実”が見えてこないことは確かだ。

 協議会での議論もここにきて「真荷主との取引関係だけでなく、業界の多層構造について光を当てるべき」との意見が出ている。確かに将来にわたってトラック運送業界が健全に発展していくためには、この多層構造がもたらす問題から目をそらすことはできない。

 だが、その一方で改めて注意しなければならないのは、「結局のところ、課題はトラック業界内の“富の分配”のあり方だ」「所詮、トラックというコップの中の嵐だ」と問題を矮小化してしまうことである。

 トラック運輸産業に様々な構造問題があることは事実だが、一方で荷主産業界はトラックの近代化を可能にするほどの対価、言い換えれば“再生産を可能とする運賃”を払ってきただろうか。

 バブル崩壊以降のデフレ環境下で、荷主産業界は総じて「モノ運び」という機能をいつでも代替可能なものとして使い捨ててきたのではないか。大胆な表現を許してもらえるならば、現在の「モノを運べない危機」は、荷主産業界が自らの過去に“復讐”されているとも言えるのではないだろうか。

 荷主産業界は「モノ運び」という大事な機能を将来にわたって失わないためにも、いま一度、トラックとの”互恵関係”について戦略的に考えるべきであろう。

>>特集:「経営×物流~日本の企業経営には物流戦略が足りない」http://diamond.jp/list/sp-logistics