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「2001年の日本銀行の量的緩和のときとそっくりだ」と、みずほ証券の高田創・チーフストラテジストは指摘する。11月2日のFRB(米連邦準備制度理事会)による6000億ドルの国債買い入れという大規模な量的緩和(QE2)以降、日本の株価と長期金利が上昇している。
01年と現在の日経平均株価と10年国債利回り(長期金利指標)を比較したグラフを見てほしい。日銀が量的緩和に踏み切った01年3月19日を100とした60営業日後(6月15日)までの推移と、10年11月2日を100としたその後の推移を比較したものだ。
10年11月2日、日経平均株価は9159円、10年国債利回りは0.93%だった。18営業日後に当たる11月30日にはそれぞれ日経平均株価は9937円、10年国債利回りは1.185%まで上昇した。01年当時の上昇率と比較すると、日経平均株価も10年国債利回りもほぼ同じ水準である。
日本の長期金利が上昇しているのは、量的緩和によって米国を中心としたインフレ懸念が生じているためである。株価は、今年の米国のクリスマス商戦の出だしが好調だったことに代表されるように、米国景気の回復期待が高まったことで日本においても景気への過度の悲観論が後退したためだ。
01年当時も、日銀の量的緩和によってインフレ期待や景気回復期待が高まり、株価や長期金利が上昇したのである。
では、その後はどうなったのか。
グラフに見るように株価も長期金利も30営業日前後にかけてピークを付けた後、下落に転じた。
01年当時の日本は不良債権の処理が十分に進んでおらず、企業の多くは過剰債務に苦しんでいた。いわゆるバランスシート調整がまだ終わっていなかった。
そのため、量的緩和は功を奏せず、ネットバブル崩壊で後退局面に入っていた景気は上向くことはなかった。インフレ・景気回復期待はしぼみ、株価も金利も低下していった。
今回も、期待がしぼむ結果に終わる可能性は十分にある。米国の家計債務の対可処分所得比率は、依然120%を超える高水準で、バランスシート調整は道半ばだ。また、10月の米国の失業率は9.6%で高止まりしている。雇用が好転しなければ、景気の自律的な回復持続は望めない。回復テンポは緩慢なものになるだろう。インフレが高進するとは考えにくい。となれば、今回の日本の株価上昇、長期金利上昇の要因が崩れることになる。
9年前と今回と量的緩和の火付け役は日銀、FRBと違うものの、市場の抱くインフレ期待、未完了のバランスシート調整など類似点は多い。日本の株価と金利の上昇は持続せず、早ければ年内にも下落に転じる公算は小さくない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田孝洋)