「過去最低の就職内定率」、「第二次就職氷河期」などと言われるほど、厳しさを増している11年卒学生たちの就職活動。しかし、実は彼ら以上に悲惨な状況に陥っている若者たちがいる。それが、大学を卒業せずに中途退学する、「大学中退者」たちだ。「新卒」でも就職が厳しい現在、彼らの就職実態とはどのようなものなのか。そして、なぜ中退する若者が後を絶たないだろうか。高等教育機関の中退者を減らす支援を行っているNPO法人NEWVERYの山本繁理事長に、知られざる中退者の実態と中退率を低下させる方策について話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

約8万人が大学を中退し
男性中退者45.9%が非正規雇用に

――新卒学生が厳しい就職環境に置かれるなか、さらに悲惨な状況にあるのが「大学中退者」の若者である。現在、中退者はどれくらいいるのか。また、彼らの就業の現状についてお教えいただきたい。

やまもと・しげる/NPO法NEWVERY理事長。1978年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。2002年に若者支援NPO法人「NEWVERY」の前身となる団体を設立。現在、理事長。「日本中退予防研究所」所長。「トキワ荘プロジェクト」代表。 NEC社会起業塾第5期生。著者に『人を助けて仕事を創る 社会起業家の教科書』(TOブックス)、『中退白書2010 高等教育機関からの中退』(NEWVERY)などがある。将来性あふれる若手社会起業家を表彰する「STYLE」にて優秀賞を受賞。週刊ダイヤモンド「社会起業家特集」で日本の社会起業家30選に選ばれる。

 実は、文部科学省などが中退者の調査・公表を行っているわけではないため、正確な数字はわからない。ただ、我々が様々な情報を組み合わせて行った試算では、大学生中退者は約8万人、専門学校を含む高等教育機関全体の中退者数(2009年度)は年間約11万8000人~9000人と推測している。

 中退後すぐに就職するのはレアケースだと思われるが、労働政策研究・研修機構が調査した「大都市の若者の就業行動と移行課程」によると、離学直後に正社員になった人は14.7%、アルバイトかパート59.8%、失業・無職16.6%である。そしてそれ以降のキャリアを見ても、男性中退者の45.9%、女性中退者の58.5%が一貫して非正規労働に従事している。これをみるとわかるように、女性の方が顕著に学歴が雇用に直結する傾向があり、中退後の女性は男性よりも就職が厳しいことがわかる。

 さらに、社会経済生産性本部が厚生労働省の委託で「ニートの若者たちの実態」を調査した結果によると、ニートの31.7%は中退経験者であることがわかっている。

 大学新卒者ですら就職状況が厳しさを増している状況下で、中退者たちは「新卒」の枠に入れないばかりか、企業側も彼らに否定的なイメージを抱いている。「どうせすぐ会社も辞めるんでしょ」というのが正直な評価だ。もちろん本人の資質や努力次第で、正社員の雇用に着くことは全く不可能ではない。大卒者でも即戦力になれないのに、大学中退者が即戦力になれるわけがないと判断されてしまうのもやむをえない状況ではある。

――昔は、「(大学を)中退しても就職できる」という若者も少なくなかったように思われる。現在と以前では、何が大きく違ってしまったのだろうか。