誰もが老後の暮らしに不安を感じている。実際、文字通り「悠々自適」の生活を送るには、金銭面のハードルはかなり高い。

 だが、自分なりに老後を楽しむことは工夫次第で可能だ。その中身はさまざまでも、生活防衛の基本的なノウハウ、投資の鉄則は共通する。まずは実態を知り、無理することなく備える。そして賢く、したたかにおカネを遣うことである。本特集は、そのための実用情報を満載した。

 特集のプロローグでは、定年退職後、夢の旅ざんまいを送る方たちの工夫や参考情報をご紹介する。「Part1 賢くおカネを遣う」では、田舎暮らし、海外暮らし、学び直し、リフォーム、エコ住宅、熟年離婚と婚活といった、老後の夢や関心事を実現するための情報である。その実態やかかるおカネ、要注意ポイントをご紹介する。思い込みや誤った“常識を”改めよう。

 たとえば、リフォーム。「ゆったりお風呂に入りたい」と浴室のリフォームを考えている方も多いが、おおよそ100万円を見ておきたい。商品代と取り付け費などが全体の6割。重要ポイントとなるのは2割ほどかかる諸経費、それに1割程度に及ぶ解体費だ。

 続いて田舎暮らし。そのコストはむろんさまざまだが、暮らしやすい土地は坪2~3万円が相場と頭に入れておくといい。夢の「温泉付き」は温泉権利金、保証金に注意。マンションで50万~70万円、別荘で100万~300万円が相場だ。

「Part2 上手に稼ぐ」では、定年後再雇用、再就職などで働き続けたいと考える方たちに、ご一読いただきたい。厳しいのが実情で、安易にとらえると痛い目に遭う。生活防衛のために、家の不用品を処分して“生活リストラ”するのも手。お宝が眠っているかもしれない。書籍、CD、DVD、貴金属、硬貨などの相場情報も参照していただきたい。

「Part3 無理なく殖やす」では、後悔しない投資の知恵を網羅した。大事なおカネを殖やし、老後の備えとするには、鉄則がある。勧められるがままに無駄なコストをかけないこと、リスクを取りすぎないように制御することだ。

 定期預金、債券、投資信託、外貨、為替、金など気になる投資テーマごとにシビアにコストを削り、少しでもトクをするための実用情報をたっぷりと盛り込んだ。
たとえば、金は業者によって販売価格がかなり違う。スプレッドやチャージなど価格決定の仕組み、その相場や損得をしっかりと押さえておこう。

 投信は高分配金のものが人気だが、そもそも分配金は損であるうえ、大きな為替リスクをとる高コスト商品が多い。どうしても分配金を手にしたいのなら、ETFを使い、格安で同じ効能を得る手立てもある。

 老後を楽しむための「お金入門」特集。若い世代から熟年世代まで、ぜひ手にとっていただきたい。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 小栗正嗣)