ユニバーサル・スタジオ・ジャパンをV字回復させたマーケター・森岡毅氏とコルクの佐渡島庸平氏(twitter:@sadycork)の対談、最終回。

勘やセンスに頼りがちなエンターテイメントの世界で、マーケティングをいかに行えばいいのか。その答えを模索します。

(文:佐藤智、写真:塩谷淳) →第1回から読む

SNSの活用がすべての鍵を握る

森岡 SNSの使い方についてはどう考えていますか?

佐渡島 私はSNSがすべてだと思っています。

 これは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)みたいな大きなマスマーケティングでも、ニッチマーケティングでも、同じだと思うんです。しかし、SNSの使い方をわかっている人は、実は世の中にほぼいない。私は、テイラー・スウィフトくらいじゃないかなと思っているんですよ(笑)。

 同じようなことで、本の見開きの使い方を本当にわかっているマンガ家って、マンガ家の中でも5パーセントもいないと思います。これだけみんなマンガを描いていても、見開きの使い方がわかってない。

『聖★おにいさん』は、見開きの使い方をよくわかっているマンガです。『聖★おにいさん』って、左下のコマが必ず途中で切れているんですよ。たとえば、私が「それで……」って言葉を切って、10秒黙ったとするじゃないですか。そのあと、何言うのか、気になりますよね?同じような効果がこのコマが切れるということで起こるわけです。

森岡 むっちゃ気になりますね(笑)。

『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』(森岡毅・今西 聖貴/KADOKAWA)

佐渡島 そうなんです。『聖★おにいさん』は、左下のコマで引きを作って、「それで……」と途中で言葉を止めるくらい読者の気持ちを高めて、右上のコマでドンと、結構大きいギャグを入れるんです。テレビでは「3分に1回笑わせる」などの工夫があるんですが、同じようなことをマンガでしている。

 こういう見開きの使い方を確実に守っているマンガ家って、ほとんどいない。私はSNSにも、絶対そういう定型があると思うんです。しかし、まだ「これぞ」という完成形は見えていない。

 USJの今の感覚だと、生涯にわたってどうやって3回来てもらうかを、考えているじゃないですか。でも、USJのツイッターをフォローすると、生涯3回だったのが生涯30回になり得る。SNSって、それだけ影響力を持ったものだと思うんです。

 しかし、みんなSNSで一文を投稿して終わりだと思っている。投稿を現実とどういうふうにつなぐかとか、アプリとどうつなぐかとかを、遊び心を加えて工夫していけばまだまだ可能性は広がると思うんです。

森岡 なるほど。

佐渡島 SNSは世界につながってるから、そこをハックすると世界が広がるなと思っているんです。しかし、まだまだ旧来的なプラットフォームの考え方に縛られているソーシャルメディアが少なくない。

森岡 めんどくさい仕込みでも、いっぱいせなあかん時代ですね。

佐渡島 そうなんですよね。アメリカのエンターテインメント企業は、ITについての深い理解は、あまりできていないんじゃないかって私は思っているんです。私が、本当にITっていうのをわかって、コンテンツ運営をしているなと思うのは、「ほぼ日(:ほぼ日刊イトイ新聞)」の糸井重里さん。糸井さんが世界で一番、インターネットとコンテンツの関係をわかっていて、ビジョンを持っているんじゃないかなと思っています。