不動産価格の安定と経済成長を
両立させた重慶の改革

 一方、こうした問題の解決の糸口が、重慶にある。

 過去6年間、重慶の住宅価格はほとんど6000~7000元/平米(日本円で約10万円)に安定しており、直轄市として、その住宅価格が中国では終始最低ラインにある。しかも、それでいて過去2年間、重慶のGDP成長率は連続して全国1位を維持している。

 重慶が飛躍的な経済成長を実現するとともに、住宅市場の安定を維持できるのは、充分な土地供給と「二級制住宅供給システム」によるところが大きいという。この2点は戸籍制度改革と土地徴収制度改革によるメリットである。

 2015年9月、重慶は農業戸籍と非農業戸籍の区別を撤廃することを発表し、また都市で5年以上、郊外で3年以上仕事を続けた人に対して戸籍の付与を始めた。この政策によって、重慶の都市戸籍を持っている人の比率(都市化率)は、2015年に一気に60.9%まで引き上げられ、全国平均レベルの56.1%を超えた。都市住民の急速に増加することによって住宅が不足し、住宅価格が高くなるはずであったが、重慶ではほとんどそのような現象はなかった。重慶の充分な土地供給によって住宅価格の安定維持ができたと見られている。

 さらに重慶は二級制住宅供給システムを取り入れることで、住宅市場における市民の異なる需要に応じている。まず、政府は公営住宅の建設に土地と補助金を提供し、低所得者層の需要を満たす。低所得者層は月10元/平方メートルの安価で公営住宅に賃貸で入居できるようになる。同時に、重慶は商品住宅の供給を増やし、他の60%〜70 %の市民の需要を満たすようにしている。過去5年間、重慶の宅地供給量は上海と北京を4〜6倍上回っている。

 こうした重慶のケースは、最近、大変注目されているが、都市住民と農村住民を分ける戸籍制度、農作業用地とその他の用地を厳格に区分する現在の土地制度を改革しようとする挑戦が、重慶以外の都市でも出ているわけではない。

 結局、大都市住民が不動産価格の異常な高騰に対抗するには、政治キャンペーンの手法で対応するほかはない。それは一時的な高揚感があるが、それで社会問題が解決されたという前例を、中国ではあまり見たことはない。キャンペーンが終わると、これからの1、2年は住宅価格はまた上がるのではないかと中国社会ではまだ思われている。