さらに、安全保障政策に大きく関わるのは、女性初の国防長官候補といわれるミッシェル・フロノイだ。フロノイは、将来の軍事力を高める投資を継続するだけでなく、同盟国の軍事力を上げる援助もしていくと述べている。よって、ヒラリー政権が推進する安全保障政策は、弱腰と批判されたオバマ政権とは異なったものとなるだろう。

 このように、ヒラリー・ランドは豊富な経験と見識を備えた人材を集めており、アメリカの国際的な指導力の回復という戦略目標を見据えて、規模とパワーを拡大し続けているといえる。

◆ヒラリーと日本
◇尖閣問題へのコミットの条件

 ヒラリーは今後、どのような日米関係を構築しようとしているのか。

「(尖閣諸島は)明らかに日米安保条約が適用される」。2010年にヒラリーが発したこのメッセージは、尖閣の領有権をめぐって日中間で紛争が起きた場合、アメリカは日本に与すると解釈することもできる。しかし、アメリカの原則は「同盟国間であっても領土紛争には不介入・中立の立場をとる」というものであり、そう簡単な話ではない。日米安保を適用するかどうかのポイントは、この領有権をめぐって日中のいずれが先に相手を刺激する行動を起こすかだという。

 ヒラリーはあくまで「アメリカの国益には何が最も必要で、有益なのか」を考え、日中双方に平和的な解決を促している。現に、「可能な限り武力ではなく、話し合いによって紛争を解決すべきだ」という立場を強調している。日中の緊張を緩和させるため、超党派の元政府高官たちで構成されたグループの派遣を承認し、日中のシャトル外交を展開したのも、戦略家ヒラリーのプラグマティズム(実践主義)が透けて見える。

 また、日米同盟体制の未来図についても、ヒラリーは従来にも増して高いレベルでの説明責任と透明性を日本にも求めてくると推測できる。

◇女性の権利向上という「未完の仕事」に突き進む

 ヒラリーは、安倍政権が国内経済活性化のために進めている女性活用策を絶賛し、大きな期待を寄せている。その背景には、ヒラリーがライフワークとしている、地球規模での女性の権利向上への思い入れがある。彼女は、女性の権利向上を外交政策の柱の一つに据えるというビジョンを描いており、今後はアメリカだけでなく、アジア全域においても「ガラスの天井」を打ち破るような働きかけが増えると予測される。そのため、「女性」や「女権」における日米協調がいっそう求められることは確実だといえる。

 ヒラリーの人生の師匠とも呼ぶべきエレノア・ルーズベルト大統領夫人は晩年、「全ての市民に平等な自由と機会を与えることは未完の仕事」だと語っている。この遺志を継いだヒラリーは、未完の仕事の完遂を自らに課し、まい進していくだろう。それが稀代の女性政治家ヒラリーに与えられた使命なのだ。

一読のすすめ

 要約では、ヒラリーの経済戦略や選挙対策、アジアでの外交政策、日本との関係を中心に取り上げた。ヒラリーの半生や、ヒラリーの信頼感が今一つである理由については、ぜひ本書を参照されたい。アメリカの今後、そして国際関係を知るうえで欠かせない一冊だ。

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