心得その4:
デバイスにパスワードを設定し
出発前にバックアップを取っておく

 旅行中に所持品を紛失することがある。スマートフォン、タブレット、ノートPCも紛失の恐れがある。紛失したデバイスに保存されていたデータの方が、デバイスそのものよりも価値が高いということも少なくない。全データのバックアップを取り、ハードディスクを暗号化し、強いパスワードを使うことで、損害を最小限に抑えることは可能だ。また、デバイスの位置を追跡する、あるいは少なくとも紛失して見つからない場合に全データを(リモートで)消去することができる盗難対策アプリを使うことをお勧めする。

心得その5:
共有はほどほどに

 孫子の兵法には「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」とあるが、犯罪者から身を守るためには、時には「敵を知る」、つまり相手の立場に立って考えてみることが必要だ。標的のお金をかすめ取るベストのタイミングと場所はどこだろうか? 自分が犯罪者の立場だったらどうするか? 最高水準の技術を持ったハッカーからの攻撃に備え、身を守るには、相手と同じように考え、考えられるすべての攻撃シナリオを想像できるようにならなければならない。その上で、どのようにして犯罪を阻止するのかを考えるのだ。

 ソーシャルネットワークで大量の個人データを共有している人は多いが、そのようなことはしないよう強くお勧めする。デジタル世界で敵になるかもしれない相手に、価値ある情報を与えることになる。よからぬ意図を持ったさまざまな輩がそのデータを使って個人アカウントに不正にログインしたり、銀行口座からデータや金銭を盗み出したりすることが可能になってしまう。また、旅行中に旅行の写真を投稿するのもトラブルの元だ。自宅を留守にしていることを知った何者かが泥棒に入るかもしれない。

 以上が、海外旅行中の5つの心得として私がお伝えしたいことだ(この他にもちろん、すべてのソフトウェアを最新の状態にしておく、信頼のおけるセキュリティ製品を使用する、不審なリンクをクリックしたり怪しげな添付ファイルを開いたりしないといった、どんな場面にも当てはまる基本ガイドラインも守る必要がある)。どれもシンプルで実行しやすいものなので、言い訳は通用しないと思った方がいい。

 ただし、オンラインであれオフラインであれ、完璧なセキュリティなどというものは存在しないということは覚えておいていただきたい。とりわけ普段よりリスクが高く、警戒心が鈍りがちな海外滞在中に基本的なコンピューターセキュリティ対策を実行することは、リスクを最小限に抑えるために誰もが最低限目指すべきことだ。賢く行動して、サイバー犯罪者に狙われないようにしよう。