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重ねる技術:
真逆から考える

「先生が教えるべきことを教え、生徒がそれを学ぶ」─これは、古代から続く教育サービスの基本形です。先生が学習の順序や速さを決めることで、最も効率よく知識を習得できると信じられてきました。

 しかし、はたして本当にそうでしょうか?わからないまま、他の生徒と先生の速度に合わせて授業が進む方法が最適なのか?もちろんそんなはずはありません。つまずいたときに、自分が理解できない箇所を、じっくりわかりやすく教えてもらったり、立ち止まって考える時間をとったりしたほうが効果的です。

 こうした古くから伝わる、正しいと思われている常識があなたの会社にもあるはずです。誰も疑わないくらい当たり前の大前提は、真逆から捉え直すと、地道に改善するよりも劇的な変化を生むことが多々あります。

 こうしたドラスティックな変化の大半は、新規参入者が破壊的な方法で仕掛けてきます。しかし、既存プレイヤーは今まで築き上げたビジネスと仕組みを守ろうとし、破壊されてしまうことが多いのです。そうならないうちに、先に社内で痛みに耐えて変えるためにも、今行っていることの「対極」から捉え直すことが大切です。

 数年前までは当たり前だった習慣が劇的に変わるなんてことはこれからも増えてくるでしょう。たとえば、わざわざレンタルビデオ店に行かずに、HuluやNetflixやケーブルテレビで映画を楽しむ人も増えたのではないでしょうか。返しに行かなくていいし、延滞金を払う必要もありません。

 企業の論理に生活者をはめ込んで合わせることはできないのです。なぜなら生活者は、より便利なほうを選ぶ権利があります。面倒を強いられ古いモデルに付き合う筋合いはないのです。

企業の強み・思い:
地方に住む生徒にも平等に学ぶ機会を提供したい

 スタディサプリの生みの親であるリクルートマーケティングパートナーズ代表取締役社長山口文洋氏には、地方の生徒や、経済的な理由で予備校に通えない生徒の現場の叫びが届いていました。

「田舎に住む高校生に会った時の、分かりやすい言葉で言うと“東京の子ってずるいよね”って。“だって、すごい予備校とか塾とか、あと、学校なんかもすごいんでしょ。それだけで差があるじゃん”と。“私、頑張って取り戻せるんでしたっけ”みたいな声とか、お子さんがご家庭の経済事情も知ってるので“僕は本当は塾、予備校行きたい”と。“でも、分かってるから(親に対して)そんなこと言えないよ”というお子さんもいたりとか」
こうした生の声が、教育の素人だった山口社長に確信を持たせたのでした。

生活者の本音:
自分のペースで勉強したい!

 受験勉強を思い返してみると、部活を切り上げて眠いまま塾に通っていた方も多いのではないでしょうか。学生時代を思い出すと、授業は一回しか聞けないし、高い授業料なので無理をしてついていこうともしましたが、集中できずあまり効果が得られなかった経験があります。

 一方、スタディサプリは時間も場所もすべて受験生が選べます。ある受験生は、「何度でも見ることができることと、隙間時間に勉強できることがよいと思っています。予備校にも通っていますが、やる気のないときに授業を受けても内容は頭に入りません。やる気があるときに効果的に勉強することができるのは、ありがたいです」と語っています。

重なりの発見:
月額980円で、ネット上で人気講師の授業が受け放題

「内容がわからないまま、他の生徒やカリキュラムに合わせていくのは辛い」という受験生の本音に、「全国どこに住んでいても平等に学ぶことができる機会を提供したい」という思いが重なり、インターネットで好きなときに授業を受けられるスタディサプリは生まれました。

「スタディサプリ」では、生徒が自分の見たい講義動画を選択し、「一時停止」や「巻き戻し」で自由に操作しながら視聴できます。これまでのような「生徒が先生に合わせる」カリキュラム主導型ではなく、生徒が自分のリズムで学習の主導権を握るスタイルに変えたのです。

 今や、56万人の受験生のうち、半分がスタディサプリユーザーであり、13万人が月額980円の有料会員になっています。

 


参考文献
・「未来人のコトバ 『チャンスを見過ごさない』」、NHK経済フロントライン、2015年11月14日配信

・「高校生が語る「受験サプリ」活用術、講義動画が高い評価」、リセマム、2014年10月3日配信

・「受験サプリの生みの親・山口文洋。自称『暑苦しい男』の生き方」、NEWS PICKS、2015年6月29日配信

・「980円のオンライン予備校 『受験サプリ』を生んだ戦略とは?」、ダイヤモンド・オンライン、2015年9月15日配信