→答えは、拡大画像表示 です。
重ねる技術:
当たり前の先の「新しい当たり前」をつくる
業界の常識、会社の常識、自分の常識。常識とは自分の考えをまっとうにさせ、変な行動をとらずに済む脳のつくった偉大な発明です。
しかし、この常識が、新しいことを生み出すときにはいちばん厄介になります。過去の失敗、他社事例を引き合いに出し、うまくいかない理由をつくります。結局、元の思考の枠に収めてしまうので、枠を超えることができなくなってしまうのです。
特に日本の教育は、問いは始めから用意されており、一つの答えを出す設計となっています。しかし、ビジネスに決められた問いなんてありません。常識を破壊する問いをつくり、まったく別の解を生み出す必要があるのです。
オカムラのように、「そもそも仕事をするのに座っている必要があるのか?」と疑問を持ち、「働く人の健康のために、オフィス家具メーカーは何ができるのか」という新しい問いをつくる必要があるのです。今あるものをどう売るかではなく、何の問題を解決したら、自社は価値を出せるのか、その問いの大きさが常識という枠を超えるカギとなります。
企業の強み・思い:
それぞれの会社にあった働きやすい環境をつくりたい
労働人口が増えてオフィス移転も増加し、その都度オフィス用品の買い替え需要が見込めた時代とは異なり、労働人口は減る一方で、一度導入したらなかなか入れ替えのないオフィス用品ビジネス。今必要なのは、製品を売ることではなく、ワークスタイルを変えるソリューションを提供するビジネスです。
オカムラは製品販売だけではなく、導入企業のカルチャーとその企業が目指す働き方を丁寧にヒアリングし、ワークスタイルに合わせたオフィス設計から製品の導入を行っています。そのなかで、日本のオフィスの典型である「座りっぱなし」「同じ姿勢をとり続けざるを得ない」という問題に向き合ったのです。
生活者の本音:
オフィスで他のメンバーと違った行動ってとりづらい
会社では誰がどんな仕事をしているかってなかなかわかりませんよね。目を瞑っている部長が寝ているのか、構想を練っているのかは判断しづらいものです。
みんな律儀にデスクに座って、なんとなくパソコンを見ていれば、とりあえず仕事をしているように見えますし、しょっちゅう席を立つようだとサボっているように思われてしまいます(実際、サボっている人もいると思いますが……)。
しかしながら、座りっぱなしは「集中力」という面からもよくないですし、健康的ではありません。腰を痛める人や、パソコンを見るたびに姿勢が前かがみになり首を痛めてしまう人も後を絶ちません。デスクワークは慢性的な肩こりの原因です。だけど、周りの同僚が長時間座って仕事をしているなかで、自分だけしないわけにはいきません。そんな真面目な日本人の気質と相まって、肩こりや腰痛を患う人が多いのです。
重なりの発見:
もっと自由なワークスタイルで働きたい
「座りすぎが健康リスクを招く要因になることは、いまや世界の常識です。実際、北欧では大部分の企業が、米西海岸のIT企業の多くも、昇降式のデスクを使っています。ワークスタイルは、それぞれの人に合ったものでいいんです」と、岡村製作所ソリューション戦略部部長の大野嘉人氏は語っています。
オカムラは誰もが思っていたけど言いづらかった、ずっと座って仕事をすることがいいという常識自体を疑ったのです。
会社が社員に対して求めていることは、集中して仕事に打ち込んでもらい成果を出してもらうことです。座っていることではないですよね。座っていることが仕事をしていることだという固定観念を疑い、新しい常識をつくることで解決したのです。
実際に、パソコン作業中に立ったり座ったりを定期的に繰り返した実験参加者は、最も疲労を感じなかったという結果が得られています。ポジションを定期的に変えることで、筋肉への負荷が分散されて、疲れにくくなるのです。
そこで生まれたのが昇降型デスク「Swift」。私自身もSwiftを愛用していますが、正直いって最初の1週間は足が痛くなってきつかったです。ですが、もう1週間もすると次第に慣れてきて、立っていると自然に姿勢がよくなるので肩こりも減り、集中力も高まったように思えます。
オフィス用品は一度揃えてしまうとなかなか買い替え需要が起こりません。しかしながら、昇降型デスクは、まったく新しい需要をつくりだしたことで、楽天をはじめ大手企業が採用し始めています。