では、どうやって効果を創出するか?

 M&Aによる効果創出を物理的な拠点の統廃合ではないところに求めるとすると、次に出てくる選択肢は「海外を含めた業務機能配置の最適化」となる。

 これまでの自社ビジネスだけではなく、買収した会社のビジネスを含めて整理し、研究開発・調達・生産・販売といった業務について、どこで、誰が実行することが最適かを検討するのである。

 例えば、今まで工場が日本にしかなかった会社が、アジアの工場を買収したとすれば、物理的な生産拠点の配置の検討だけではなく、グローバルに広がった生産の調整機能をどこに置くかが検討課題となる。各社がこれまで通りの業務をするのではなく、より効率化を目指した改革の余地があるはずである。

 そして、実際に機能配置を進める際、筆者がまず第一に推奨するのが、自社と買収会社の購買業務を集約することだ。なぜなら、購買領域では、モノの流れを大きく変えることなく、商流の変更及びそれに伴う意思決定権限の変更により、メリットを出すことができるからである。

「自治」という逃げからの脱出<br />――M&Aにより真のグローバル企業を目指す(出典:PwC)

 海外を含めた購買機能の集約によって得られるメリットは、【1】スケールメリットによる購買単価の低減 【2】購買の専門知識を集めることによる調査力・交渉力の強化 【3】価格変動や為替リスクの抑制 【4】税効率の改善 があげられる。

 1点目のスケールメリットについては、詳しい説明は不要であろう。各社で調達している代替可能な商品の購買ボリュームをまとめることで、サプライヤーから引き出すことができる価格を低減することが可能になる。たとえば、間接材に関しては、費目の特性を考慮する必要があるが、ITや物流費などについては、一定の集約が可能である。また、直接材については、製品の品質や性能等に影響を与えるため、間接材ほど容易ではないが、2点目に挙げるメリットで補完することで実現が可能になる。

 2点目に挙げられるのは、購買専門性の集約である。各購買品目に関して求められる要件及びその供給が可能なサプライヤーの情報を一極集中することで、分散していた専門知識をまとめて、サプライヤー開拓や交渉が行えるようになる。また、サプライヤーだけではなく、社内に対しても、たとえば研究開発段階から使用する原料や部品を合わせるような議論を専門知識を生かして行うことで、継続的な購買業務の改善が可能となる。

 3点目は、多くの企業が頭を悩ませるコモディティの価格変動及び為替リスクへの対応である。世界中の各社がそれぞれサプライヤーと価格を決め、その際の為替レートを決めている状態では、価格変動・為替リスクをマネージできない。こうした機能も、購買権限を集約することで、一括して交渉・管理することが可能となる。

 最後の4点目が税効率の改善である。日本の法人実効税率はおよそ35%であり、これはたとえばシンガポールの17%と比べてかなり高い税率となっている。ビジネス的に意味がある場合に限られるが、集約した組織を低税率国に置くことで、税効率を改善することも可能となる。

 日本企業は、税効率の話となると、途端に腰が重くなる。筆者もこうした話をすると、必ずと言っていいほど、欧米企業などが税務当局から多額の追徴課税を受けた例などを元に、税効率の改善はリスクがあるのではないか、という質問を受ける。

 しかし、ここで言う税効率の改善は、脱税では決してない。税金の軽減を目的とするのではなく、ビジネスとして必要な機能を最適な場所に置くことを考え、その答えが日本ではない場合に、更なる効果を創出することを意味している。税の問題を考える際には、実態を伴ったスキームが必須である。

 実際に、PwCが支援しているグローバルトップレベルのクライアントが購買集約によって効果を創出している例を挙げよう。