外国人はなぜ“ZEN”が好きなのか
日本政府観光局によると、2015年の訪日観光客の数は1973万人にのぼった。過去最高だった14年から600万人以上増え、記録を更新したことになる。この傾向は続いており、16年には2000万人を超えるとが言われている。円安の影響もあるのだろうが、それだけではないはずだ。われわれが思う以上に、海外での日本文化に対する高評価の表れでもあるのだろう。
聞くところによれば、最近では「宿坊(しゅくぼう)」に泊まりたがる外国人旅行客が増えているそうだ。宿坊とは、仏教寺院などにおける僧侶や参拝者のために作られた宿泊施設。宿泊だけでなく、座禅や写経の体験もできる。インバウンド観光客の需要を受け、企業主導で宿坊を建設する動きもあるというから驚きだ。
一方、アメリカでは近年、仏教徒が徐々に増加しているという。すでに人口の約1%にあたる350万人にも達したそうだ。信者の数でいえばキリスト教、ユダヤ教に次ぐ3番目となる。また、仏教徒とまではいかないものの、家で毎晩仏教書を読むような「ナイト・ブディスト」が、さらに数百万人はいると推測されている。
松山大耕著 講談社+α新書
208p 840円(税別)
アメリカといえばスティーブ・ジョブズ氏が禅に強い影響を受けていたことはよく知られている。彼は、禅に通じる「シンプルで美しく、見えないところまで美しく」という考え方を徹底させて大ヒット商品を生み出していった。
このように仏教や禅がフォーカスされ、自ら体験したい人が急増しているのは、なぜなのだろうか。
本書の著者の松山大耕氏は東京大学大学院農学生命科学研究科修了後、埼玉県新座市にある臨済宗妙心寺派の平林寺で3年半の修行生活を営み、その後妙心寺退蔵院副住職となる。2009年には観光庁「Visit Japan大使」、2011年からは京都市「京都観光おもてなし大使」を務めた人物だ。
また、2011年に日本の禅宗を代表してヴァチカンで前ローマ教皇に謁見。2014年には日本の若手宗教家を代表してダライ・ラマ14世と会談するなど世界のさまざまな宗教家・リーダーと交流をもっている。こうしたグローバルな活動により、2016年には「日経ビジネス」誌の「時代を創る100人」に選出されている。