各国の中央銀行が、仮想通貨の検討に熱心に取り組んでいる。その主要な目的は金融政策の有効性確保だが、他方において、銀行預金の消滅、プライバシー喪失など、大きな問題がある。

中央銀行の仮想通貨への関心が
1年間で大きく変化

 日本銀行が、11月の『日銀レビュー』で、仮想通貨に関するレポート「中央銀行発行デジタル通貨について―海外における議論と実証実験―」を発表した。

 昨年12月にも仮想通貨に関するレポートを発表しているが、それと比べると、かなりの変化が見られる。昨年は、仮想通貨のメカニズムと、国際決済銀行(BIS)の仮想通貨レポートを紹介した程度だった。

 それに対して、今年のレポートは、方向性は示していないものの、利害得失の検討などにも踏み込んだ内容になっている。

 これは、この1年の間に、世界でかなり大きな変化があったことの反映だ。1年前にBISが「中央銀行が仮想通貨を発行する可能性がある」としたときには、「なぜ中央銀行が?」という受け止め方が大勢だった。

 しかし、現在では、多くの国の中央銀行が、仮想通貨に強い関心を寄せている。今年6月にアメリカ連邦準備制度、世界銀行、IMFが主催した「ブロックチェーンとフィンテックに関するフォーラム」には、90を超える国の中央銀行が参加した(CoinDesk参照)。

 雑誌Forbesは、このフォーラムを報道する記事で、「どこかの中央銀行が5年以内に仮想通貨を実現するだろう」という関係者の言葉を引用している。

 以下では、仮想通貨の発行に関する各国中央銀行の取り組みを紹介し、その目的と、実現される姿、それがもたらしうる問題などについて述べる。