能力の低い人がたくさん給料をもらうと、
能力のある人が辞めていく

 ランドマーク税理士法人(神奈川県/税理士)は、相続税対策専門の税理士法人です。相続対策相談1万件、相続税申告2000件を超える圧倒的な実績を誇っています。
 清田幸弘代表によると、「会計業界は人が定着しにくい業界」で、離職率が高い。

「会計事務所は、なかなか人が定着しないと言われています。所長が年始に『あけましておめでとうございます』とみんなの前で挨拶をして、年末に『来年もよろしくお願いします』と言うときには、所員の顔が全員違っていた、という話もあるくらいです(笑)」(清田代表)

 ランドマーク税理士法人では、社員が辞める原因のひとつに、「能力が低い人ほど、たくさんの給料をもらっていた」という矛盾がありました。

「武蔵野さんに指導をいただく前は、残業代を正確に支払うことを決めて、『すべて申告するように』と社員に伝えていました。
 すると、残業が野放し状態になって、残業がかえって増えてしまった(笑)。残業を生活給にしている社員にとっては、遅くまで会社にいればいるほど給料が増えるわけですから、都合がよかったわけです。
 そこで考えを改め、経営計画発表会で『残業のない会社を目指す』と宣言し、『残業ランキング』をつくり、残業が多い社員を発表するようにした。
 すると、残業が減る一方で、『自分よりも仕事ができない社員が、残業をたくさんして高い給料をもらっているのはおかしい』と不満を口にして辞めていく社員が現れました」(清田代表)

 そこで清田代表は、残業時間と賞与を連動させるなど、給料規定を見直して、「能力のある人が正しく評価される会社」「日本一社員に優しい高収益な税理士法人」を目指すための施策を打ち出しています。

「22時以降は会社に残れないようにネットワークカメラを設置したり、毎週水曜をノー残業デーにする取り組みを進めているが、一番の効果は、私が『残業を減らせ、減らせ』『早く帰れ、帰れ』と口酸っぱく言い続けていることですね(笑)。
 私どもはテレビ会議システムを使って、毎朝、全事業所一斉に朝礼をしますが、朝礼でも『早く帰れ、帰れ』、ノー残業デーの水曜日も『早く帰れ、帰れ』と言い続けています」(清田代表)

 ランドマーク税理士法人は、残業問題への取り組みを始めたばかりで、それでも、2015年2月に「平均74時間」あった残業時間が、1年後の2016年2月には「平均52時間」に減り、6月には「平均35時間」にまで減っています。
 かつては100時間医上残業する社員も数名いたそうですが、現在は「ゼロ」になっています。

 離職が日常茶飯事の業界で、ランドマーク税理士法人は、135名(2016年9月時点)もスタッフを抱えているにもかかわらず、社員の定着率が安定しています。

 離職者は、毎年10名程度と横ばいですが、毎年130%成長で人材を増やしているため、実質的な離職率は低くなっています。
 清田代表の著書である『お金持ちはどうやって資産を残しているのか』(あさ出版)はおすすめですので、一度ぜひ書店で手に取ってみてください。