実際、保険外の介護サービスを行っている事業者のなかには、介護保険と同じサービスを行っても、保険外の費用は6割程度など介護保険よりも安い価格設定にしているところもある。また、混合介護の弾力化を見込んで、介護保険と保険外サービスを廉価なセット販売にするといった動きも始まっている。

「混合介護の弾力化」に敏感に反応し、競争を始めようとしている事業者が出てきている点は、事業者間の競争を促したい公取委の思惑通りかもしれないが、皮肉にもその動きはダンピングに向かう可能性がある。

 公取委は、混合介護が進まない理由として「規制」を強調するが、多くの事業者があげているのは人手不足だ。

 前出の報告書では、「保険外サービスの提供に当たっての課題」として、運営主体が株式会社の事業所の37.4%、社会福祉法人の34.7%が、「人員確保が困難」だと答えている。

 もしも利用者獲得のために保険外の介護サービスが安く買い叩かれる構造が定着すると、介護従事者の処遇改善どころではなく、介護の現場をさらに疲弊させ、人手不足に拍車をかけることになりかねないのだ。

「互助」を生かした
介護サービスを利用

 経済的に余裕のある人たちが、自らの介護ニーズを満たすために、全額自費で保険外サービスを利用するのは問題ない。買い物や旅行の付き添い、各種手続きの代行、認知症高齢者の見守りなど、さまざまな保険外サービスを提供している事業者がいるので、それらを利用すれば、介護保険では利用できないサービスを受けられて、暮らしの満足度は高められる。

 だが、介護保険外のサービスの担い手は、なにも介護事業者だけではない。

 すでに、規制にとらわれないボランティアによる買い物や移動サービス、地域住民が行う高齢者の見守りや安否確認、当事者家族などが運営する認知症カフェなど、無料もしくは低料金で利用できる社会資源が存在している。

 同時に、高齢者が住み慣れた地域で、生活を続けていくための支援・サービスの構築を目指す「地域包括ケアシステム」の中には、ボランティアや住民組織が「互助」として位置づけられており、今後ますます事業者以外の人々が担う介護サービスが期待されている。

 一般利用者は、お金をかけずに自分の介護ニーズを満たせるなら、それに越したことはない。一部の富裕層を除けば、あえて高い料金を支払って、保険外のサービスを買う人はそれほど増えないのではないだろうか。

 公取委の提言は、こうした現実を全体的に捉えておらず、どこかピントがずれているように思う。だが、国は「介護サービス改革」を重要事項にあげており、今後、なんらかの指針が出されることになる。そして、その流れにのって、保険外サービスを煽る報道が行われることになるだろう。

 その時、私たち国民は自らの暮らしを守るために、どのような道をとるべきなのか。たんに事業者が提供する保険外サービスだけではなく、地域にある社会資源にも目を向けて、自分や家族の介護ニーズを満たせるような賢い利用者になりたいものだ。