これにより、ISやイスラム過激派との戦いで役割を果たすシーア派イランとの関係はどう展開していくのだろうか。ISやイスラム過激派との戦いを優先すればイランは協調すべき相手となる。他方トランプ次期大統領はイランとの核合意に対する敵意を隠しておらず、どのようにバランスをとることになるかが注目される。

 米国の同盟国である欧州や日本との関係はどう展開するのだろう。2017年はフランスの大統領選挙やドイツの総選挙が行われる。また英国のEU離脱問題は、メイ英首相が言うとおり2017年3月に正式の離脱通報がEUに行われたとしても、交渉は難航するだろう。EUへの貿易のアクセスはこれまでどおり確保して移民を制限するというような「良いとこ取り」が許されるはずもない。

 一方欧州においては反移民、反EUのポピュリスト政党が頭角を現している。トランプ次期大統領は選挙期間中、英国のEU離脱を支持し、右翼政党英国独立党のファラージ元党首が駐米大使になることを期待する旨公言し、むしろ欧州のポピュリズムを煽るような発言を行っていた。米・EUの自由貿易協定についても反対の態度を明確にしており、一般論としてはEUに対して消極的な姿勢をとると考えられる。また、NATOの欧州諸国には安全保障経費の負担増大を迫ることが想定され、米欧関係は難しくなるのだろう。

米欧関係は厳しくなる
日本は能動的外交ができるか

 日本との関係はどうか。TPPからの米国の離脱は日本の戦略にとって深刻な打撃となる。TPPはアベノミクスの成長戦略の柱の一つであるだけではなく、自由主義経済体制のルールを浸透させ、中国などの国家資本主義の変化を促していく上でも重要な手立てとなるはずであった。TPPをとりあえず11カ国で発足させ、米国との提携のあり方を検討するべきだろう。

 また、トランプ政権が日本の安全保障負担を拡大することを迫ることは想像できるが、防衛費の拡大や思いやり予算の増額というより、新安保法制の下での計画・訓練の促進を含め実質的な安全保障への役割の拡大を実現していくべきと考える。

 そして何より重要であるのは日本が東アジアの安保環境の向上のために能動的外交を展開できるかどうかということである。上述のように米国の対中政策も大きな変化が見通されるのかもしれない。日本も安全保障上の考慮とは本来両立するはずの中国との協力拡大を真剣に考えるべきである。

 いずれにせよトランプ政権とも緊密な関係を維持していくことは日本にとって必須である。しかし、従来のように米国の動きを待って受動的に対応するのではなく、日本から能動的に動いていくことを期待したいと思う。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)