住居の付加価値として周囲に自然や緑があることは、いつの時代でも魅力だ。不動産会社の有楽土地の調査(東京、千葉、埼玉、神奈川に住む20~30代の男女500人が対象)によれば、住居購入の際に緑などの自然環境の豊かさを考慮する人は、約8割にも上る。マンション市場でも、庭付きや公園付き、最近では「田んぼ付き」という珍物件も登場している。
そうした世相を背景に、有楽土地、名鉄不動産、三交不動産、東レ建設、新日本建設、長谷工コーポレーションは、究極の自然環境とも言える“森”を付けた物件を共同開発し、販売を開始した。千葉県習志野市の“家族の森プロジェクト「Green Green」”だ(千葉県習志野市、総戸数270戸、間取り3LDK~4LDK、平均専有面積85㎡台、販売価格2300~4900万円台を予定)。
このプロジェクトは、東京駅まで35分、船橋駅まで10分の京成本線実籾(みもみ)駅から徒歩11分に位置し、2008年に分譲を開始した「ユトリシア」(全5棟、総戸数1453戸、敷地面積約6万6000㎡)の「参番街」に当たるもの。壱番街、弐番街の分譲はすでに完了し、今後参番街に続き、四番街、五番街の開発・販売が計画されている。
参番街の前に面する森は、1ha(サッカーグラウンド約2面分)にも及ぶケタ外れの広さだ。ケヤキやモミジ、サクラもあれば、りんごの木、竹やぶなどもある。全ての樹木が成長すれば、常緑樹、落葉樹が生い茂る、まさに森という呼び名にふさわしい規模と多様さになる。散歩、森林浴を楽しめるし、居住者の交流の場、子どもの遊び場にもなる。バーベキューコーナーもあり、ちょっとしたアウトドアライフも味わえる。
森は、鍵付きのセキュリティゲートの内側にあり、居住者専用となっているのも魅力だ。子どもを安心して遊ばせることができる。モデルルームを2月11日からオープンした有楽土地では、「主なターゲットは20代後半から30代の小さいお子さんがいる若い夫婦。森付きの宣伝効果もあり、来場者や問い合わせが数多く寄せられている」と話す。
では、実際にこの物件の価値はどれくらいなのか? 不動産経済研究所に聞くと、「“森付き”というマンションは聞いたことがない。いくら環境が良くても、利便性や価格に問題があれば売れないが、この物件は最寄り駅や都心へのアクセスがまずまずで、価格も割安感がある。売れるマンションの条件が揃っており、人気が出るのではないか」という指摘だった。
また、「マンション開発のトレンドも人気に寄与する」と分析する。新築マンション開発の波は、通常都心から郊外に広がり、郊外型で価格が高騰して割安感がなくなると売れなくなるため都心に戻り、しばらくしてまた郊外に広がるといったパターンを繰り返すそうだ。
そして、今はちょうど都心回帰の波がピーク。都心型では、広さを求めるとどうしても価格が高くなるし、緑も少なくなる。つまり、子どものいる若夫婦のニーズにかなう物件が非常に少ないのが現状だ。
そんな飢餓感が広がるなか、この「Green Green」が登場。アクセスや価格の条件が良く、さらに環境の上積みもあり、子育て世代にとって願ったりかなったりの物件になる可能性が高いというわけだ。トレンドも追い風にして、前代未聞の森付きマンションの人気がどこまで高まるか、注目したいところだ。
(大来 俊)