日本の地方銀行が中国に構える拠点の数が増えている。今年3月には群馬銀行、第四銀行が加わり、上海だけでも32行(2011年3月現在)が駐在員事務所を置いている。日本の地銀は63行(2011年2月現在)、その半数以上が中国に出たというわけだ。
「取引先から中国事情を尋ねられて、いまどき『知りません』では通用しない」と某地銀担当者は語る。第4次中国進出ブームが本格化し、取引先が中国進出を加速させている今、中国進出支援をはじめ、貿易・金融などの情報提供、市場調査とこれらビジネスサポートが必須業務となってきている。
地銀側にも中国に出ざるを得ない背景がある。景気の見通しが悪い日本で、ビジネスの行き詰まりに危機感を持つのは地銀も同じだ。融資額を増やすことは困難、金利を落として利ざやを削り、体力の弱い信用金庫や第二地方銀行などと合併することでしか生き残る道はない。
これだけ増えた地銀の中国拠点だが、中国における地銀の存在意義を問う声もある。日本の金融ジャーナリストは語る。
「地域の金融として地元の取引先との共存共栄という、ウィンウィンの関係を目指すという理屈はわかる。しかし、駐在員事務所開設でかけたコストを回収できる見通しはあるのだろうか」
確かに中国において地銀ができる業務は限定的だ。規制の厳しさから金融取引は容易にできず、圧倒的多数が情報収集拠点としての駐在員事務所を置くに過ぎない。こうした状況を「事実上、サービスによるダンピング合戦だ」とする厳しい意見もある。
「コストばかりで実利なし」も
上海の地銀、明暗くっきり
上海事務所に駐在するある地銀職員は、「上海に30行も集まる地銀の駐在員事務所だが、元気がある地銀とそうでない地銀にくっきりと明暗が分かれる」と話す。
元気がないのは、実利がとれないことを理由に、周囲が駐在員事務所の必要性を認めたがらないことに起因する。