日本メディアも報道しているように、今年のメッセージでは2016年の成果として「領土主権と海洋権益を守った」ことを挙げ、「誰がこの問題で文句をつけようとも、中国人民は絶対に承知しない」と述べている。その部分だけを見ると、中国は強硬外交をするのかと思ってしまうがそうではない。領土問題や歴史問題は中国の「原則問題」で、絶対に譲れない問題である。これがらみの事件が起こったら、中国が厳しい態度をとる。新年のメッセージにこういう強い文言が加わったのは、「原則問題」がらみの問題の発生を警戒しているためだと考えられる。

 中国は急に大国になったため、大国としての振る舞いに慣れていないようにも見受けられたが、昨年後半からは世界の政治・経済体制に貢献するという動きになっており、今後は国際協調的な外交を前面に出していくだろう。メッセージで習総書記は「中国人民は自分の生活がよくなるよう希望するだけでなく、各国人民の生活がよくなるよう希望している」と述べ、さらに「国際社会が手を取り合い、人類運命共同体の理念を掲げて、われわれのこの星を一層平和で繁栄したものに建設するよう心から希望している」とも述べており、ウィン・ウィンを基礎にした経済外交、世界の平和のために貢献する外交を展開することを示唆している。

 今年の新年メッセージで多く述べられていたのが貧困への取り組みである。これは中国共産党にとって大きな課題である。

「小康社会」の実現に向け
貧困撲滅で国民の信頼を得る

 メッセージで習総書記は、「小康(ややゆとりのある生活水準)の途上では一人も置き去りにできない」、「私が最も気にかけているのは、困難な人々である。食事はどうか、住居はどうか、よい新年、よい春節を迎えられるか。私は一部の大衆が就職、子女教育、医療、住宅などの面でなお困難を抱えていることも知っている。これらの問題をたえず解決していくことは、党と政府の逃れられない責任だ」と述べた。中国は昨年全国の貧困人口を1000万人減らしたが、現在も農村の貧困人口は5575万人に上り、貧困撲滅の取り組みの難しさを示している。

 もともと共産党は、多くの人々の利益を代表する党であり、とくに弱者に配慮した政策は中国共産党にとって最も重要な政策である。

 なぜ貧困対策の加速を強調するのか。理由は三つある。

 一つ目の理由は、これまでの政策の「負の遺産」の処理が必要であることだ。

 毛沢東時代は、伝統的な社会主義思想の影響を受けて、平等な分配であった。だが、インセンティブが働かないため人々のやる気を削ぎ、結果として悪平等社会となった。鄧小平小平時代に始まった改革開放は、市場競争によって人々を豊かにしたが、結果として貧富の格差を拡大させた。その後の政権は、改革開放の「負の遺産」を処理すべく格差是正を唱えたが、目立った結果を残せなかった。共産党の「良き伝統」の復活を目指す習政権にとって改革開放の「負の遺産」の処理は重要である。