酒田の大火で、火の粉を振りまく大沼デパート (内閣府広報誌「ぼうさい」38号より)

 地方都市では財政力が弱いこともあって十分な消防力が確保できていないところが多い。今回のような想定外の大火が起きると、自前の消防ポンプ車両では対応できない。ここでは、地方都市の消防力のあり方、大火リスクの高い市街地での消防力のあり方が問われている。

 消防力の基準では人口をベースにポンプ車両などを決定している。しかし、必要消防力は人口だけで決まらない。今回のような大火では、ポンプ車両が6台とか9台ではとても足りない。地域面積や地形さらには市街地の形状も考えて、消防力を決めるようにしなければならない。消防力の基準のあり方が、今回の大火で問われている。

(3)「逃げる」

 最後に「逃げる」についてである。今回の大火では、幸いにして死者が無かった。その理由としては、延焼速度が遅かったこともあるが、地域ぐるみの迅速な避難が行われたことが大きい。過去に何度も大火に遭遇し、「南風のときは大火に要注意」といった伝承が生きており、住民に危機感があったことが役立っている。それに加えて、火災では珍しい事ではあるが、行政によって避難勧告が出されたことも、人的被害の軽減につながった。

 私は、津波だけでなく大火でも逃げ遅れを防ぐための避難勧告が欠かせないと考えている。水門を閉めようとして津波に巻き込まれた悲劇を、大火でも繰返してはならないと考えているからである。強風で飛び火などが多発する時には、関東大震災や函館大火のように取り囲まれ型の焼死者が発生する。それゆえに、同時多発火災や急激燃焼火災に対しては、広域避難計画の策定が欠かせない。今回の事例は、とても参考になる。

おわりに

 地方都市の問題を解決する上でも、次の大震災火災に向き合う上でも、この糸魚川大火の警鐘を「我が事」として受け止めなければならない。この悲しい出来事を教訓にして、本当に大火のないまちづくりに向けて、大きな一歩を踏み出すことができればと思っている。

室﨑益輝(むろさき・よしてる)/神戸大学名誉教授、ひょうご震災記念21世紀研究機構副理事長、兵庫県立大学防災教育研究センター長、ひょうごボランタリープラザ所長、海外災害援助市民センター副代表