川崎市内113校に配布される
「フロンターレ算数ドリル」の狙い

 天野がフロンターレで志してきたスポーツと地域とを結びつける試みは、子どもたちに新しい経験をもたらすことになるのではないか。ISSとの生交信を見た子どもたちの中にISSに興味を持つ子が出てくるかもしれない。

台風の中、行われたISSとの交信イベント。ここから子どもたちは何を得たか

 台風が接近していながらも、あの日の等々力競技場を訪れた子どもたちの中から宇宙飛行士を志す子が出てくれば、それは天野やフロンターレにとって大きな成功になる。たとえ宇宙飛行士が誕生しなくとも、JAXA(宇宙航空研究開発機構)やNASAを進路にする子が出てきてもおかしくない。宇宙開発を支える関連企業を目指す子どもが出てくるかもしれないのである。

「自分が小学校の時に天体望遠鏡を持ってて、宇宙、星に興味があった。つまり小さい時に見たこと、経験したことって大人になった時に間接的に生きてくるんです。(イベントに採用した)カブトムシもそう。あれだって小さい時に取りに行った記憶とか、自分で飼ってたときの経験があってイベントにした。子どもの頃に感じたワクワク感、ドキドキ感というのは一生の記憶に残るものになるんじゃないかと思います」(天野)

 同じように、フロンターレが全面的に協力して2009年から作られ、川崎市内113校を対象に配布されてきた小学6年生向けの「フロンターレ算数ドリル」が、算数が嫌いな子どもを減らす効果をもたらしているかもしれない。ドリルを教材にして選手が参加した算数教室が行われており、選手のシュートスピードを計測したり、選手と同時にゴールできるよう、事前に計算した上でかけっこをしてみたりということをしてきた。これらの活動の結果、数字や計算に興味を持つ子どもたちが出てくるかもしれない。

「そうなったら面白いですよね。サッカー選手になれないとしても算数ドリルで数字に興味を持ち、ノーベル物理学賞を取りましたとかってなったら製作者冥利に尽きます」(天野)

 なお、算数ドリルについては副教材として73%の採用率を達成。残りの27%の学校の生徒たちも、それぞれが自宅に持ち帰り、補助的な使い方をしているのだという。