戦後教育がはじまった年から2016年の春までに、わが国の最高学府の2トップをなす東大と京大で出題された国語の入試問題を読んでみたというのが、『東大vs京大 入試文芸頂上決戦』永江朗(原書房)である。

 本書を読むと、国語入試問題はやっぱり昔もわけがわからなかったことがわかる。

東大VS京大
それぞれの問題は…

 たとえば戦後教育のスタート地点である1947年(昭和22年)の東大入試をみてみよう。この年の国語問題は3問からなり、その第1問はこんな感じだ。

●日本文學史上に於ける價値高き作品もしくは作家を十えらびその理由を簡單に述べよ

 おい!日本文学史上のベスト10だなんて、いくらなんでも大雑把過ぎるだろう!

 永江はこれを「中年編集者の酒場のおしゃべり」と評しているが、いるいるたしかに。酔ってそういう正解のない議論に熱くなっているオヤジが(ハッ!もしやHONZの飲み会もそうだったりして!? 戦後ノンフィクションのベスト10を各自挙げていくとか?それで熱くなって掴み合いになるとか?)。

 時代は飛んで、1966年(昭和41年)の京大の問題もなかなかだ。この時は、土井晩翠の詩『荒城の月』が出題されたのだが、設問がすごい。

この歌すべてを通じて流れる『思想』を、四字の漢字で示せ

 知っている人は、物悲しい滝廉太郎のメロディとともにぜひ脳内再生してください。18歳の前途洋々たる若者に対していかに無茶振りしているかがわかるはずだ。「栄枯盛衰」「諸行無常」「栄華零落」「一盛一衰」「会者定離」……思いつくままに解答してみたが、出題者にぜひ聞いてみたい。なにか悩みでも抱えているのか?

 面白いのは、そういうわけのわからない問題もある一方で、世相を反映した入試問題も数多いという事実である。

 たとえば、1960年(昭和35年)の京大入試問題。この年の出題は5問。その第1問目は、交通事故が増えていることについて書かれた小学生の作文を並べ替えるという問題である。

 1955年に通産省が「国民車構想」を発表して以来、わが国ではモータリゼーションが加速する。それとともに交通事故も社会問題となっていく。みどりのおばさんが初めて東京に現れたのが59年。シートベルトの設置義務は69年を待たなければならない。この入試問題はそんな高度経済成長まっただ中の時代の空気を反映している。