ビギナーズラックや大当たりが
依存症を加速させる

――依存症になる人とそうでない人がいるのはなぜでしょうか。

山下 暇であったり、趣味や専念できるものがない、なんて方は危険ですが、それ以上に重要な要素が「ビギナーズラック」です。誰だって、初めてギャンブルをした時に、一度も当たることなく大金をすってしまったら、「二度と行くもんか」と思いますよね。しかし、偶然にも初めて行った時に大きく勝つ人がいる。そうすると、ドーパミンが大量に分泌され、大脳辺縁系に依存の回路ができるのです。私も、パチンコは友人に誘われ、行ったことはあるのですが、もしそこでビギナーズラックを経験したならば、依存症になっていた可能性があると思います。

――パチンコや競馬、宝くじなど様々なギャンブルがありますが、特に注意が必要なものはありますか。

山下 運だけが大きくものをいう宝くじで、サラ金からお金を借りてまで依存してしまう人は皆無です。一方、素人が偶然、羽生善治さんに将棋で勝ったとしても、勉強を非常に要する将棋の依存症になることもありません。

 つまり、大切なのは、この「運」と「勉強(工夫)」の組み合わせなのです。パチンコや競馬は、雑誌を読んで機種や馬の研究をするなど一定の工夫のしがいがあり、かつ運も必要になってきます。これが、ギャンブルが面白くなる絶対的要素で、依存の回路が強化されている条件なのです。また、「自分は努力している」という自己肯定感や「自分は選ばれている」といった選民意識もそれを後押ししていると思います。

「欲動のアクセル」を抑え
「理性」のブレーキをかけること

――では、ギャンブル依存症はどのように治療を行えばいいのでしょうか。

山下 よく、クリニックにいらっしゃった患者のご家族の方が「もうやらないように反省文を書かせました」「もうしませんと誓わせました」とおっしゃるのですが、これは全くといっていいほど意味がありません。先ほども説明したように、依存症患者はギャンブルを目の前にすると、理性である前頭前野のブレーキが壊れた状態になってしまうからです。いくら理性の部分で反省や誓約をしたところで無意味なのです。

そこでまず今すぐにとりかかれることとしては「できてしまった依存の回路が回らない、つまり前頭前野のブレーキが壊れない環境をつくる」ことです。当たり前ですが、ギャンブルはお金を持っていないとできませんから、家族にお金を管理してもらい自由に使えないようにすれば、ブレーキがきちんと機能し続けるのです。