ギャンブル依存症を
めぐる論点とは何か

 カジノの解禁是非の議論において、必ず出てくる大きな論点として「ギャンブル依存症」の問題がある。

 日本において、ギャンブル依存症及び疑いのある人は536万人(成人人口の4.8%)に達するという推計が厚生労働省より2014年夏に発表された。これはいうまでもなく、日本には世界に類を見ない規模のギャンブル産業が存在していることが背景にある。

 第1回で触れた、2015年におけるカジノの世界全体の産業規模が約20兆円という予測に対して、日本のパチンコ・パチスロの市場規模は18.9兆円(2011年)であったことからもわかるように、日本のギャンブル産業は巨大である。

レジャー関連団体発表の数値を基にアクセンチュア作成
※1月30日著者追記
本図において、比較した数値が純粋なギャンブルとしての収益規模の比較にはならないというご指摘をいただきましたので、説明させていただきます。もともとの趣旨は、「日本版IRの是非を考える際に、国内には既に大きなギャンブル産業が存在しているにも関わらず、カジノ解禁の議論の中でギャンブル依存症の問題を前面に出すことは、主張として弱い」ということです。もし、ギャンブルにおける売上規模を単純に比較するなら、パチンコ・パチスロ業界の売上計上基準をグロス計上からネット計上しなおした数値と、日本版IRの想定売上のうち、カジノ分を抽出した数値との比較が正しいと言えます。

 日本のギャンブル産業全体において、カジノが占めると想定される割合はかなり小さい。つまり、ギャンブル依存症の問題は、カジノを解禁するかどうかが問題ではない。

 ギャンブル依存症は、ゼロにすることは不可能であるが、少なくとも海外の主要国と同等の1~2%程度には低減させていきたい。既にカジノを解禁している先進国を見ても、ギャンブル依存症の割合が日本のように突出して高いというわけではないため、カジノ先進国でとられているギャンブル依存症への対策や規制は有効だと言える。

 実際に、カジノは入場する際に一人一人チェックを行う国が多く、そこでギャンブル依存症の方やその可能性がある方、また家族などから入場拒否の要請のあった方は入場できない仕組みとなっている国もある。