安倍首相は2月10日、ホワイトハウスでトランプ米大統領と会談、日米同盟の強化で合意した。トランプ氏が選挙中に唱えた駐留米軍経費の100%日本負担や、日本の輸出品への高率関税などの話は出ず、会談後の共同記者会見でトランプ氏は「私たちの軍を受け入れてくれる日本の皆様に感謝したい」と述べ、共同声明では安保条約5条が尖閣諸島に適用されることを再確認したから、防衛省幹部は「満額回答に近い」と言う。
だがこの会談前日の9日夜、トランプ大統領は中国の習近平国家主席と1時間の電話会談を行い「一つの中国」政策を尊重することを表明、共同記者会見では「中国国家主席と素晴らしい会話をした。私たちは仲良くなろうとしている。日本にとってもそれはとても利益になるでしょう」と述べた。
事前に日米の事務方が用意した共同声明では、中国の南シナ海などでの行動を非難して同盟の強化を謳ったが、トランプ大統領は習主席と“Cordial”(誠意に満ちた)な会話でさまざまな問題を話し合い、米中は「仲良くなる」と言うのだから、風向きがほとんど逆になってしまった。
日中双方に良い顔をしたい
米国の思惑
これと似た状況は2015年4月27日の「日米防衛協力のための指針」(ガイドラインズ)改定の際にも起きた(第51回「日本のために中国と対決したくはない 新ガイドラインに垣間見える米国の本音」参照)。日本側は尖閣問題や、中国の海洋進出に対抗するためガイドラインズの改定を求め、新たな指針が中国に対する抑止力強化、少なくとも牽制になる、としていた。だが新指針に日米が合意、公表される前に米国は中国に対しその内容を伝え、中国に敵対するものではないことを説明していた。
これは新指針公表の2日後の4月29日、中国外務省の記者会見で新華社の記者がガイドラインズ改定について、「米国は公表前に内容を中国に通知していたとの話があるが事実か」と質問し、洪磊(コウライ)報道官がそれを認め「中国は釣魚島などの問題に対する厳正な立場を再度伝えた」と答えたことで明らかとなった。