ここで問題になるのは「1%程度」の“程度”の幅である。現在、市場ではマイナス0.1%~プラス0.1%の幅と考えられている。しかし金利は上限であるプラス0.1%を突破した。国債を購入する銀行等の金融機関にとっては好都合だが、日本国債約1000兆円のうち、約4割をも保有する日銀には、逆に問題が発生した。

 日銀は政府から独立した法人とされ、資本金は1億円で、そのうち政府が55 %を、民間が残り45%を出資する。出資者には一般の株式会社の株式に相当する出資口数を証した「出資証券」が発行される。出資証券はジャスダックに上場され、株式に準じて取引されている。金融政策を司っていることもあり、議決権(経営権)はない。当然「決算」も行っている。

 日銀の決算は、外国為替では時価評価で損益(為替差損益)を算出しているが、国債では受取利息と支払利息の「損失」を、国債の満期までの期間で分割して計上する方法(償却減価法)を採用している。損失とは、長期金利の低下(価格の上昇)を背景に、額面を大幅に上回る高値で国債を買っているためだ。

 この計算方法でも、日銀が金融緩和のために大量に買っている国債の「含み損」が、昨年末に10兆円を超えたと見られる。異次元緩和導入直後の2013年度末の損失額は約1兆円だったが、昨年末には約10兆円に拡大したと見られている。政府機関の決算や会計を検査する会計検査院も「日銀は財務健全性の確保に努めることが重要」と懸念を示した。昨年4~6月に日銀が購入した国債全体の利回りもマイナス水準になった。日銀の財務内容が悪化すれば、国への納付金が減り、赤字になれば、納付金どころか補助金の可能性もあり、逆に国の財政にマイナスになる。

金利が上昇すれば損失が広がる

 さらにいうと、現在の日銀の決算方式では、国債価格がどのように変動しようと基本的に損益には関係しない。しかし銀行などの金融機関は、国債などの金融商品は償却減価法ではなく、「時価評価法」で決算を行い、国債の“価格”が値下がり(金利が上昇)したら損失が発生する。つまり、金利が上昇すると損失が広がるのである。

 すなわち、金利の上昇を抑えないと、金融機関の決算方式では損失が拡大していく。つまり、金融機関にとっては一般的な時価評価法の「評価損」が、現在の日本銀行が採用している原価評価法の「含み損」を超えて拡大することになる。

 こうなると、長期国債0.1%と示したレベルを自ら守ることが、日銀にとって至上命令となってくる。「金額を無制限にして買入を行う」指し値オペも行い、また2月末には国債買入オペ(公開市場操作)を事前に通知することによって、長期金利は一時的に低下することとなった。

 筆者は借入や評価損の問題、そして経済や金融では「考え方」が大事ではないかと考えている。やはり、国債買入金額や「評価損」は大きすぎれば、問題になるのである。そもそも返済計画のない借金(国債発行)は、銀行ではあり得ない。“無制限”という買入(介入)も、経済や金融では不自然さを否めない。この辺の「そもそものまじめさ」が、国民に向けた経済政策でもっとも大事なのではないか。もし国民が政策に不信感を抱いたら、経済政策は良い方には効かないであろう。

 このように、とにかく今年の金融政策は、長期金利を0%前後、マイナス0.1%~プラス0.1%にコントロールすることが最重要課題となる。つまり「長期金利制限政策」とならざるを得ない。しかも、トランプノミクスおよび政治的圧力と米国の中央銀行FRBの利上げ政策によって長期金利が上昇し、日本の長期金利も上昇傾向にあり、油断ができない。そうなれば今後、無制限介入を行い、国債購入目標の80兆円が反故にされる可能性もあるのである。

(経済学博士・エコノミスト 宿輪純一)